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海洋天堂（海洋天堂／OCEAN HEAVEN）
（2010年 中国・香港）（上映時間1時間38分）
監督・脚本：シュエ・シャオルー
出演：ジェット・リー、ウェン・ジャン、グイ・ルンメイ、ジュー・ユアンユ
アン、カオ・ユアンユアン、ドン・ヨン
＊シネスイッチ銀座ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://kaiyoutendo.com/
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＜ストーリー＞
中国の青島の水族館で働くシンチョン（ジェット・リー）は、妻に先立たれ、
自閉症の息子ターフー（ウェン・ジャン）を男手ひとつで育ててきた。そんな
中、シンチョンは末期ガンで余命わずかとわかる。息子の将来を案じた彼は、
自分の死後にターフーが１人で生きていけるように、できる限りのことをしよ
うとするのだが……。
＜レビュー＞
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抑制的に描く死期迫る父と自閉症の息子の絆
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世界的アクションスターのジェット・リーが脚本に感銘を受けて、ノーギャラ
出演を申し出たという映画。妻に先立たれ、自閉症の息子を1人で育てていた男
が、末期ガンで余命わずかとわかり、残される息子のためにいろいろなことを
するというお話。
あまりにもベタな感動ストーリー。お涙頂戴のウェットな映画にするには、ま
さに最適な素材です。しかし、『北京ヴァイオリン』などの脚本を手がけ、こ
れがデビュー作となったシュエ・シャオルー監督は、まったく違ったアプロー
チでこの映画を仕上げています。描写はあくまでも抑制的。ウェットな場面は
ほとんどありません。冒頭の自殺未遂という衝撃的なシーンも、サラリと描く
徹底ぶり。
効果的なのが、父親のシンチョンが水族館で働いているという設定。しかも、
息子のターフーも泳ぎが達者ということで、プールなどの水のシーンがたくさ
ん登場します。水槽の中を魚とターフーが一緒に泳ぎまわるシーンなど、美し
いシーンが満載です（撮影はあのクリストファー・ドイル！）。これが映画全
体のトーンに大きな影響を与えています。
中心的に描かれるのは、父と子の何気ない日常。自分の死後を考えて、シンチ
ョンは息子のために入所できる施設を探したり、身の回りのことが１人ででき
るようにあれこれと指導します。そこでは、思い通りにいかないこともたくさ
んありますが、そんな負の部分も含めて生き生きと描き出しています。
さらに、シンチョンに重いを寄せターフーの世話を焼いてくれる近所の女性、
ターフーが好意を持つピエロの女性などの存在も、人と人とのつながりの大切
さを伝える役割を果たしています。
後半になっても、抑制的なタッチは変わりません。死期が迫る中でも取り乱す
ことなく、息子のために様々なことをするシンチョン。一方、それを理解して
いるのかいないのか、相変わらずマイペースなターフー。
海亀のエピソードを使ったラストが秀逸です。ターフーの成長ぶりをテンポよ
く描いた後日談の最後に、親子の絆を押し付けがましくなく描いて、観客の心
を揺さぶります。
聞けば、シュエ・シャオルー監督は、長年自閉症施設で行ってきたボランティ
ア活動での経験を基にこの映画を撮ったとか。ならば、なおさら声高にメッ
セージを発したり、過剰な演出に走りがちなのに、そうしなかったことが成功
の要因でしょう。
普通のオッサンに徹しきったジェット・リーの抑制的な演技に加え、息子役の
ウェン・ジャンの熱演も印象的。彼の死んだ母親役で、『きみに微笑む雨』で
チョン・ウソンと共演したカオ・ユアンユアンもチラリと登場。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年7月18日（日）シネスイッチ銀座にて。午後2時45分の回
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