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悲しみのミルク（LA TETA ASUSTADA）
（2008年 ペルー）（上映時間1時間37分）
監督・脚本：クラウディア・リョサ
出演：マガリ・ソリエル、スシ・サンチェス、エフライン・ソリス、マリノ・
バリョン
＊ユーロスペースほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://kanashimino-milk.jp/
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＜ストーリー＞
ペルーの貧しい村。テロの時代に壮絶な恐怖と苦しみを味わった女性が亡くな
る。母親の苦しみを受け継ぎ、恐怖に包まれた暮らしを送る娘のファウスタ
（マガリ・ソリエル）は、母を故郷の村に埋葬したいと願い、その費用を稼ぐ
ため裕福な女性ピアニストの屋敷でメイドの仕事を始める。そこでファウスタ
は、恐怖心を紛らわせるため即興の歌を口ずさむ。その歌に興味を持ったピア
ニストは、1曲歌うごとに真珠一粒と交換すると約束するのだが……。
＜レビュー＞
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ペルーの歴史を背景にした1人の女性の葛藤と出発
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2009年のベルリン国際映画祭で最高賞の金熊賞を獲得したペルーのヒューマン
ドラマ。80年代から90年代にかけて起きたペルー内戦を背景に、戦争によるト
ラウマを母親から受け継いだ女性の葛藤を描いています。
冒頭は病床の老母と娘が歌で会話する不思議なシーン。そしてまもなく、この
母親が死去。残された娘ファウスタは、母を故郷の村に埋葬しようとするもの
の、それにはお金が必要。そこで裕福な女性ピアニストの家で、メイドをして
お金を稼ごうとする……。
この映画の大きな特徴は、寓話的な要素がたくさん詰め込まれているところ。
主人公のファウスタは、内戦でおぞましい目にあった母の悲しみを、母乳を経
由して受け継いでしまったとされています。しかも、自分はけっしてレイプさ
れないように、体内にジャガイモを埋め込まれています。
日々恐怖に包まれて暮らし、１人で外出することもままならないファウスタ。
しかし、お金持ちの家に働きに行くようになり、少しずつ変化が起きます。
美しく繊細な映像、音楽、詩的な言葉などが一体となって、ファウスタの心の
葛藤が描かれます。彼女に歌を歌わせるために真珠をプレゼントすることを約
束する女性ピアニスト、含蓄のある言葉でファウスタの心を少しだけ溶かす庭
師なども、効果的な形で登場します。また、心を閉ざすファウスタと対照的に、
叔父一家の底抜けに明るい結婚式模様なども描かれます。
終幕近くになって、ファウスタはあることからついに自分の意思を明確にし、
自分自身で行動します。それはすべての女性に対するクラウディア・リョサ監
督のメッセージなのかもしれません。ラストに映るジャガイモの花が心に残り
ます。
傷ついた女性の葛藤と再生の物語に、ペルーの社会や歴史などを巧みに織り込
んでいるのがこの映画の魅力。けっしてストレートに感動できる映画ではあり
ませんが、奥行きと深みのある佳作です。
ちなみに、リョサ監督は、ノーベル賞作家マリオ・バルガス・リョサの姪にあ
たるそうです。そういえば、何となく中南米文学の香りを感じたりして……。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年4月22日（金）ユーロスペースにて。午後2時10分の回
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