軽蔑


(2011年 日本)(上映時間2時間15分)
監督:廣木隆一
出演:高良健吾、鈴木杏、大森南朋、忍成修吾、村上淳、根岸季衣、田口トモ
ロヲ、日向寺雅人、蕨野友也、小林ユウキチ、緑魔子、小林薫
*角川シネマ有楽町、角川シネマ新宿ほかにて公開
ホームページ http://www.keibetsu.jp/
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<ストーリー>
新宿・歌舞伎町のチンピラのカズ(高良健吾)は、兄貴分に命じられてバーを
襲撃する。そこには、カズが恋焦がれていたダンサーの真知子(鈴木杏)がい
た。カズは真知子を連れ出し、2人はカズの故郷へと向かう。カズは名家の跡
取りだが両親との折り合いが悪く、真知子との結婚も反対される。やがて真知
子は東京へ戻り、その間にカズは賭博で借金が膨らむのだが……。

<レビュー>
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中上健次原作。激しく切ない恋愛ドラマ……のはずなのに
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芥川賞作家・中上健次の遺作となった小説を『ヴァイブレーター』『余命1ヶ月
の花嫁』『雷桜』などで知られる廣木隆一監督が映画化。新宿歌舞伎町のチン
ピラとポールダンサーの女性との激しくも切ない恋愛を描いたドラマです。

チンピラのカズは、命じられるままにポールダンサーの真知子が踊る店を襲撃。
その混乱の中で真知子を連れ出し、2人でカズの故郷へ向かう。カズは大資産
家の息子で、父親はマンションを用意してくれるが、結婚は絶対に認めようと
しない……。

元々、登場人物に感情移入するのが難しいドラマです。何しろカズはデタラメ
でだらしない男。そんな男を真知子がなぜ好きになるのかもわかりにくいとこ
ろ。2人が背負ったものやそれぞれの心理をキッチリ描いて納得させてくれな
ければ、とてもスクリーンには入り込めません。

しかし、そこはさすがに心理描写の巧みな廣木監督。手持ちカメラや長回しの
多用など廣木節ともいえる映像によって、2人の心理をじっくりとあぶり出し
ます。冒頭近くの歌舞伎町を疾走する映像や濃厚なセックスシーンなども、い
かにも廣木監督らしいところ。

ところが、それでも胸にグッと来ないのはなぜ????? 2人の激しい愛情、
戸惑い、苦悩、孤独などが十分に伝わってきません。

駆け落ちの時に、真知子は「五分と五分」の関係だと宣言します。しかし、行
き先がカズの故郷だったことから、2人の歯車が狂い始めます。真知子を認め
ないカズの両親、ズカズカと入り込んでくる友人達、そして昔の女……。様々
なことが積み重なって、カズが父親に包丁を向けるのが前半のヤマ場。しかし、
そこに至るまでの感情の積み重ねが見えてこないので、唐突で盛り上がりに欠
けます。

その後、一度は歌舞伎町に戻って別れようとする真知子。しかし、カズの説得
で再び彼の故郷に戻ります。ところが、彼はその間に賭博で膨大な額の借金を
背負います。それが大きな悲劇を招きます。

どうしようもない状況の中で破滅へ向かうカズの苛立ちや苦悩、彼を支えよう
としながらもうまくいかない真知子のやるせない気持ち(「自分さえいなけれ
ば」というような)、それらが伝わってきません。地元のヤクザ山畑の言動も、
彼が背負ったものが見えないので空回りするばかり。

それでも終幕近くの電車のシーンは感動的。バックに流れる憂歌団の歌がハマ
リ過ぎです。

しかし、その後がクドイ!いくらなんでも、最後の車の中のシーンは不要でし
ょう。

若い恋人を演じた高良健吾と鈴木杏はどちらも熱演。ただし、高良健吾は軽さ
が目につくし、鈴木杏は「頑張ってる感」が前面に出てしまうのが惜しいとこ
ろ。それ以外では、久々にスクリーンで見た緑魔子の存在感が圧倒的でした。

≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆(+1/2★)

                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年6月5日(日)角川シネマ有楽町にて。午後1時25分の回


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