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君を想って海をゆく（WELCOME）
（2009年 フランス）（上映時間1時間50分）
監督：フィリップ・リオレ
出演：ヴァンサン・ランドン、フィラ・エヴェルディ、オドレイ・ダナ、デリ
ヤ・エヴェルディ、ティエリ・ゴダール、セリム・アクグル、オリヴィエ・ラ
ブルダン
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ http://www.welcome-movie.jp/
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＜ストーリー＞
イラク国籍を持つ17歳のクルド難民ビラル（フィラ・エヴェルディ）は、家族
とロンドンに移住した恋人ミナを追って、イラクから4000キロの距離を歩いて
フランス北端のカレにやって来た。だが、ロンドンへの密航に失敗し、カレに
足止めされる。もはや海峡を泳いで渡るしかないと考えた彼は、市民プールの
フランス人コーチ・シモン（ヴァンサン・ランドン）に指導を依頼する。妻と
離婚調停中のシモンは、難民支援のボランティアをする妻に認めてもらえるこ
とを期待して、コーチを引き受けるのだが……。
＜レビュー＞
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難民の青年と水泳コーチの心の交流。人間ドラマと社会派ドラマが融合
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イラクからフランスに不法入国したクルド人難民の青年のお話。ロンドンにい
る恋人に会うためにトラックで国境を越えようとするものの失敗。厳しい取締
りの中で、ドーヴァー海峡を泳いで渡るという無謀なチャレンジを決意し、町
のプールの水泳コーチに教えを乞うものの……。
中心的に描かれるのは主人公の青年ビラルと水泳コーチのシモンの交流。最初
はビラルに対して無関心だったシモンが、次第に彼に協力するようすが描かれ
ます。けっして高邁な理想を振りかざすのではなく、成り行きでそうなってい
くという展開が自然です。
この映画には2つのドラマがあります。１つは、純愛のために無謀な冒険を試み
るビラルの恋のドラマ。そして、もう１つは水泳コーチのシモンの生き直しの
ドラマ。
シモンは元金メダリスト。しかし、今は市民プールで水泳のコーチをしていて、
妻とは離婚寸前の状況です。そんな人生に疲れた彼が、あまりにも純粋すぎる
ビラルの情熱の実現に手を貸すことで、生きる希望を見出していきます。
しかし、シモンがビラルを助けることはかなり危険な行為。カレという町では
不法入国者に対して厳しい取締りが行われ、不法入国者のみならず、彼らに食
料を提供するボランティアなどの協力者も取り締まりの対象になっています
（シモンの妻もボランティアの一員）。
そうした状況に対する監督の疑問や怒りが、ドラマの根底に流れています。つ
まり、この映画は優れた人間ドラマであるのと同時に、社会の現状に対して問
題提起した社会派の映画でもあります。
とはいえ、その両者のバランスがよいので、けっしてお説教臭くはありません。
シモンをヒーローにすることもできたはずですが、あえてその方向に持ってい
かずに、ごく普通の人間が難民に関わっていくという仕掛けにしたことで、よ
り共感しやすいドラマになっています。
後半、ビラルが思いを寄せる女性が窮地に追い込まれ、ついに彼は無謀なチャ
レンジに乗り出します。はてしてその運命はどうなったのか？
驚愕の事実のあとの後日談が、余韻を残します。難民の現状に対する監督のメ
ッセージがより明確になる切ないエンディングです。
欠点といえば、ビラルがあそこまで入れ込む恋人との関係がイマイチ伝わりに
くいこと。それに、コーチと元妻との関係にもよくわからないところがありま
す。
この映画の原題は「ＷＥＬＣＯＭＥ」。それとは正反対の難民に対する排他的
な当局や人々の態度が、何とも皮肉に感じられます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（人間ドラマと社会派の要素をバランスよく描いた佳作。難民問題についてい
ろいろと考えさせられます。）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年1月9日（日）ヒューマントラストシネマ有楽町にて。午後1時50分の回
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