恋の罪


(2011年 日本)(上映時間2時間24分)
監督・脚本:園子温
出演:水野美紀、冨樫真、神楽坂恵、児嶋一哉、二階堂智、小林竜樹、五辻真
吾、深水元基、内田慈、町田マリー、岩松了、大方斐紗子、津田寛治
*テアトル新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開
ホームページ http://www.koi-tumi.com/
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<ストーリー>
どしゃぶりの雨の日、渋谷・円山町のラブホテル街の木造アパートで、猟奇的
に殺された女性の死体が発見される。事件の捜査に当たるのは、幸せな家庭が
ありながら不倫に走る女刑事の吉田和子(水野美紀)。事件の背景には、大学
のエリート助教授・美津子(冨樫真)と人気作家の貞淑な妻・いずみ(神楽坂
恵)の驚くべき秘密があった……。

レビュー>
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相変わらず壮絶な園ワールド。女たちのエネルギーに圧倒されるばかり
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『愛のむきだし』『冷たい熱帯魚』などの園子温監督が、90年代に起きた実在
の殺人事件をもとに描いた映画。前作『冷たい熱帯魚』同様に、すさまじいエ
ネルギーが詰まった作品です。

枠組みはサスペンス。渋谷・円山町のラブホテル街で起きた猟奇殺人事件。そ
れを捜査するのは、平和な家庭がありながら、不倫を続ける女刑事。事件の鍵
を握るのは二人の女。有名作家の貞淑な妻と大学助教授。作家の妻は、満たさ
れない日々の中で性の世界に堕ちていき、そこで大学助教授と知り合う。彼女
は夜は売春婦をしていた……。

というわけで、ネタがネタだけに全編エロいセックスシーンが満載(当然18
禁)。しかし、これだけ多いと、さほどエロく感じなくなるから不思議なもの。

セックスシーンが満載だからといって、けっしてセックスそのものを描いてい
るわけではありません。セックスは、女たちの生き様を描く一つのツールとい
う感じです。

ここに描かれている女たちのドラマは壮絶そのもの。満たされない思いを抱え
た女たちがどんどん堕ちていきます。園監督自身は、「女性を描きたかった」
と言っているし、「女性讃歌」だという批評もあるようですが、実際に観てみ
るとそんな生易しいものではありません。最初から最後まで、女たちのエネル
ギーがスクリーンを覆い尽くし、こちらはただ圧倒されるばかり。

特に夜になると売春婦に変身する大学助教授には、戦慄さえ覚えてしまいます。
「愛のないセックスなら金を取れ!」と叫び、売春客とも対決する狂気に近い
姿。それに引きずられていく作家の妻の姿も、壮絶のきわみです。

『冷たい熱帯魚』同様にかなりエグい映画なのに、なぜか笑える場面がたくさ
んあるのも面白いところ。あまりにも唐突な展開、過剰すぎる演出、生硬なセ
リフまわし。それらが奇妙な笑いを生み出します。

個人的に特に面白かったのが、女刑事の不倫相手のキャスティング。彼は嫌悪
感を覚えるほどのヒドイ男。しかし、やがてそれがお笑いコンビ・アンジャッ
シュの児嶋一哉であることが判明。そこからは、彼がどんなにエゲツないこと
をしても、ついつい笑ってしまいました。こういう笑いは、はたして狙ったも
のなのかどうか???

後半に進めば進むほど、高まっていく女たちのエネルギー。そこで登場する大
学助教授の母。ある意味、この人が一番スゴイ女かもしれません。あらゆるも
のが渦巻いて、もはやカオスとしか言いようのない状態になった時に、自身も
性的な闇を抱えた女刑事によって明らかになる事件の真相。これまた壮絶の一
語。

かつてのアングラ演劇も連想させるような不可思議な映画。はたして、このあ
ふれるエネルギーとあまりにも過剰な世界に、あなたはついてこれるでしょう
か?私は責任を持ちません(笑)。セックスシーンが大盛りなので、その点も
ご注意を。

まあ、なんにしてもこんな映画を撮れるのは、園監督以外にいないでしょう。
そういう意味で得がたい才能なのは確かです。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★☆☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年11月15日(火)シネ・リーブル池袋にて。午後3時45分の回


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