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コクリコ坂から
（2011年 日本）（上映時間1時間35分）
監督：宮崎吾朗
声の出演：長澤まさみ、岡田准一、竹下景子、石田ゆり子、風吹ジュン、内藤
剛志、風間俊介、 大森南朋、香川照之
＊ＴＯＨＯシネマズスカラ座ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kokurikozaka.jp/
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＜ストーリー＞
1963年の横浜。港の見える丘に建つ古い洋館"コクリコ荘"で暮らす16歳の少女、
松崎海（長澤まさみ）は、下宿屋を切り盛りしながら、船乗りだった亡き父の
ために、毎朝海に向かって信号旗を揚げていた。そんな海が通う高校では、歴
史ある文化部部室の建物、"カルチェラタン"の取り壊しを巡って学生たちが反
対運動を起こしていた。その騒動に巻き込まれた海は、1学年上の新聞部の少
年・俊（岡田准一）と出会う。2人は次第にひかれあうのだが……。
＜レビュー＞
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映像美で綴る古き良き時代へのノスタルジー
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1980年に「なかよし」に連載された同名コミックをスタジオジブリが映画化。
宮崎駿が企画・脚本、『ゲド戦記』の宮崎吾朗が監督。
相変わらず素晴らしい映像です。舞台となる1963年頃の雰囲気が見事に描き出
されています。細部までこだわった作画はもはや芸術品。特に坂の多い街の姿
や、高校のカルチェラタンと呼ばれる建物の内部などが印象的。
しかし、残念ながらドラマ的にはかなり薄味に感じられました。物語の縦糸は、
高校の古い建物カルチェの取り壊しを巡る学園紛争。その高校の生徒で、下宿
屋を切り盛りする少女、海が騒動に巻き込まれ、そこで取り壊し反対派のリー
ダー的な存在の俊という少年と出会い、お互いにひかれあっていくロマンスが
物語の横糸です。
伝わってくるのは、古きよき時代に対するノスタルジー。今ほど豊かではなく
ても、みんなが生き生きと暮らし、古いものも大切にする時代への郷愁が色濃
く漂います。
しかし、それ以上に伝わってくるものはありませんでした。カルチェラタンを
巡る闘争は、とりたてて見どころもなく、海たち女子学生が存続の一助にと館
内を掃除するあたり、単なるロマンスの小道具にしか思えませんでした。
一方、海と俊のロマンスでは、「もしかしたら２人に血のつながりがあるので
は？」という障害が用意されています。海の父は朝鮮戦争の際に死去。その父
が知人に託した赤ん坊が俊だというのです。それを通して、どれほど深いドラ
マが展開するのかと思いきや……。
クライマックスでは、カルチェラタンを巡って俊や海たちが理事長に直訴。同
時に2人の関係についての疑惑にも決着がつきます。2つのエピソードともお手
軽な解決で、特に心に響くものはありません。
海も俊もどちらもまっすぐで純な若者です。いまどきいそうもないキャラです
が、40年近くも前だと考えれば不自然さはないでしょう。ただし、それでもイ
マイチ魅力に乏しいのは確か。もう少し何か個性を際立たせて欲しかったので
すが。ただのいい子だけじゃねぇ……。
ここに描かれた世界は、明らかに企画・脚本の宮崎駿の世界。息子の宮崎吾朗
が頑張っても、それに追いついていないのが見えてしまいます。
ならば、宮崎駿自身が監督を務めたらどんな作品になったのか……と、つい考
えてしまう映画でした。
≪ぽちの満足度≫
★★☆☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年7月17日（土）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後5時30分の回
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