|
日輪の遺産
（2010年 日本）（上映時間2時間14分）
監督：佐々部清
出演：堺雅人、中村獅童、福士誠治、ユースケ・サンタマリア、八千草薫、森
迫永依、土屋太鳳、遠藤恵里奈、松本花奈、三船力也、中野裕太、金児憲史、
柴俊夫、串田和美、山田明郷、野添義弘、麿赤兒、ジョン・サヴェージ、麻生
久美子、塩谷瞬、北見敏之、ッキー・カーチス、八名信夫
＊角川シネマ新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.nichirin-movie.jp/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1945年8月10日、敗戦前夜の日本。真柴少佐（堺雅人）、小泉中尉（福士誠治）、
望月曹長（中村獅童）の3人に密命が下る。山下将軍が連合国軍最高司令官マッ
カーサーより奪取した900億円の財宝を、秘密裏に隠匿せよというのだ。この極
秘任務を手伝うために女学校の20人の少女と彼女たちを引率する教師、野口が
勤労動員されるのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
戦争の非人間性を現在とつないで描いた人間ドラマ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
浅田次郎の同名小説を『半落ち』『出口のない海』の佐々部清監督が映画化。
終戦間際に極秘作戦に関わった４人の男と20人の少女たちの過酷な運命を描き
ます。
ポツダム宣言受諾が確定的となる中、陸軍の幹部は山下将軍が連合国軍最高司
令官マッカーサーより奪取した900億円の財宝を隠匿すべく、3人の軍人に密命
を下す。彼らは、教師に引率された20名の少女たちを使い、作業を続ける。し
かし、やがて3人の軍人には秘密保持のために、恐ろしい命令が下るのだった…
…。
秘密の任務に、だまされて駆り出された20人の少女の健気さが心に染みます。
日本の勝利を信じて疑わず、「出てこいニミッツ、マッカーサー」と歌いなが
ら、お国のためにと必死で働きます。級長の久枝を演じる森迫永依をはじめ、
子役たちの初々しい笑顔が切なさを高めます。
彼女たちに作業をさせる3人の軍人（真柴、小泉、望月）が、いずれも善人なの
がこの物語の大きなポイント。引率教師ともども少女たちの体調を気遣い、優
しく接します。おかげで、彼らと少女たちの間には心のふれあいが生まれます。
ところが、そんな彼らに残虐な命令が下ります。それによって戦争の悲惨さ、
非人間性がよりリアルに浮き彫りになります。
少女の１人で望月の妻となった久枝（八千草薫）による2011年の回想でドラマ
が綴られる構成も、当時と今をつなぐ仕掛けとして効果的です。ああいう悲劇
の上に、現在の日本があることが自然に伝わってきます。
ただし、そこにマッカーサーの元通訳による回想まで加えるのは、クドすぎま
せんか？そこは、もっとシンプルにしてもよかった気がするのですが。
それに出来すぎの展開が多いのも気になりました。原作は未読なので何ともい
えませんが、特に後半はそういう傾向が強く感じられます。
さらに、多くの観客にアピールするという点では、少女たちが隠す財宝の正体
をしばらく伏せたり、少女たちの悲劇の詳細をナゾとして描くなど、もう少し
ミステリー色を強くしてもよかったかもしれません。
しかし、まあ、それは佐々部監督の意図とは違うのでしょう。あくまでも純真
な少女たちをああいう運命に追い込んだ戦争を、現代とつなげる形で描くのが
最大のテーマ。年老いた久枝と、今は亡き仲間たちや引率教師との次元を超え
た邂逅が、それを如実に物語っています。
戦争が風化する中で、こういう映画をつくり続けることは、とても意味のある
ことだと強く感じました。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年8月29日（月）シネ・リーブル池袋にて。午後4時55分の回
[「に」のページ] |
|