再会の食卓(APART TOGETHER)


(2010年 中国)(上映時間1時間36分)
監督:ワン・チュアンアン
出演:リサ・ルー、リン・フォン、シュー・ツァイゲン、モニカ・
モー
*TOHOシネマズシャンテほかにて公開
ホームページ http://shokutaku.gaga.ne.jp/
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<ストーリー>
上海に住む玉娥(ユィアー)(リサ・ルー)のもとに届いた1通の手紙。それは彼女
の元夫の燕生(イェンション)(リン・フォン)からの手紙だった。2人は40年前の
内戦で生き別れになり、元国民党軍兵士の燕生はずっと台湾で暮らしていた
のだ。まもなく燕生は40年ぶりに中国に戻り、玉娥と再会する。燕生は玉娥に、
台湾で余生をともに暮らしてほしいと申し出る。だが、すでに玉娥は心優しい男
性・善民(シャンミン)(シュー・ツァイゲン)と再婚し、今では子供や孫たちに囲ま
れ平穏な日々を送っていた。善民は、燕生を精一杯もてなすのだが……。

<レビュー>
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戦争に翻弄された元夫婦と家族を温かなまなざしで描く
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ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した、戦争によって離れ離れになった男女
をめぐる物語。

戦争という悲劇に翻弄された元夫婦。長い間消息不明だった突然の元夫の出現
に戸惑いつつも、昔の愛情を取り戻そうとする元妻。それに対して戸惑いを隠
せない元妻の現在の夫や家族。お涙頂戴のベタベタの感動物語にはピッタリの
素材です。あるいはドロドロの三角関係劇になっても不思議ではありません。

ところが、この映画のタッチはウェットさとは無縁。食卓を囲んでの会話を中
心に、まるでホームドラマのように静かで温かなタッチでドラマが進みます。

物語の中心になるユィアーとイェンシェンの元夫婦と、妻の現在の夫シャンミ
ンは、いずれも心優しく、誠実な人たち。それゆえ自分の気持ちを素直に打ち
明けられず、なかなか決断ができません。「今頃ふざけるな!」とイェンシェ
ンを罵倒してもおかしくはないシャンミンでさえ、カニを奮発し、3人で温かく
食卓を囲みます。

そんな彼らと家族たちの胸の内を、繊細かつ温かな眼差しで拾い上げていきま
す。

離婚を決意した現夫婦が、法律的な問題から一度結婚するハメになるシーンな
ど、ユーモラスな場面もたくさん登場します。

ドラマの背景として大きく取り上げられるのは、急激に変化する上海の街。高
層ビル群のそばに並ぶ古い低層住宅。その光景を通して、3人の男女の取り戻す
ことのできない過去の歴史を浮かび上がらせています。

ためらいつつも、元の鞘に納まって台湾で暮らそうとする元夫婦ですが、やが
てある出来事が起こり、事態は大きく変わります。

クライマックスの3人での食卓シーンが印象的。それぞれが様々な思いを抱えつ
つ、酒を飲み歌う3人。さりげないシーンだからこそ、よけいに感動を呼び起こ
します。

ラストに後日談として、高層マンションでの新生活を持ってきたのも大きなポ
イント。近代化の中で失われていく温かな家庭への郷愁が伝わってきます。

若者ではなく、年老いた男女の三角関係だからこそ出てくる深みと味わい。
『ラストエンペラー』で西大后を演じたリサ・ルーをはじめと3人のベテラン俳
優の味のある演技に感服。それぞれの顔に刻まれた年輪こそが、この映画の最
大の見どころかもしれません。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年2月13日(日)Bunkamuraル・シネマにて。午後2時50分の回


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