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シリアスマン（A SERIOUS MAN）
（2009年 アメリカ）（上映時間1時間46分）
監督・脚本・製作：ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン
出演：マイケル・スタールバーグ、リチャード・カインド、フレッド・メラメ
ッド、サリ・レニック、アーロン・ウルフ、ジェシカ・マクマナス、アダム・
アーキン
＊ヒューマントラストシネマ渋谷ほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://ddp-movie.jp/seriousman/
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＜ストーリー＞
1967年のアメリカ中西部ミネソタ州の郊外。平凡で真面目な大学の物理学講師
ラリーは、穏やかな日々を送っていた。気になることといえば、大学で終身雇
用のチャンスを前にしていることと、13歳の息子が2週間後に行うユダヤ教の成
人のことぐらい。だが、ある日、突然彼に思いも寄らぬ災難が襲いかかり始め
る。落第点をつけた学生からは強引にワイロを押しつけられ、隣人は敷地の境
界線を侵食し、挙句の果てに妻からは離婚を切り出されるのだが……。
＜レビュー＞
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マジメ男の不条理な人生を描いたコーエン兄弟によるコメディー
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『ファーゴ』『ノーカントリー』のコーエン兄弟によるコメディー・ドラマ。2
010年のアカデミー作品賞にノミネートされました。
冒頭に登場するのは、ユダヤ教のラビ（聖職者）をめぐるエピソード。宗教が
頼りにならないことを示唆しているとも、世の中の不条理さを伝えているとも
とれる、不思議なエピソードです。
続いて本編のスタート。舞台は1967年のアメリカ中西部。主人公は家庭でも職
場でも謹厳実直な大学の物理学講師ラリー。ところが、まもなく、彼のもとに
トラブルが次々に押し寄せてきます。
学校で落第点をつけた生徒からワイロの罠にはめられ、隣人と境界線トラブル
になり、ついには他の男と仲良くなった妻から離婚を迫られます。それ以外に
も、子供たちの身勝手な振る舞い、同居する弟の問題行動など、トラブルの種
はつきません。学校での昇進の話も謎の投書で危うくなります。まさに嵐のよ
うな日々です。
それでも最初は相変わらず「いい人」全開モードで、静かに運命を受け入れよ
うとするラリー。しかし、さすがに悩みは深くなり、ついに悪夢まで見るよう
になります。そこで、彼はラビに相談しようとするのですが……。
3人のラビに次々に頼ろうとするものの、結局は何も得られないラリー。彼の不
安と焦りがヒシヒシと伝わってきます。マジメ男がトラブルに巻き込まれてし
まう人生の不条理さが印象付けられるのと同時に、価値観がぐらつき、頼るも
のもなく、途方に暮れる人間の悲哀が漂います。
とはいえ、語り口はあくまでもシニカルでユーモラス。笑いどころが満載です。
笑いの向こう側に、人生や時代に関する鋭い洞察を感じさせるところも含めて、
いかにもコーエン兄弟らしいところ。
クライマックスはラリーの息子の成人式。そこで一度は光が差しかけるものの、
ラストにはもうひとひねりが用意されています。はたして、襲来する竜巻の先
には何があるのか。明確な結論を出さずに、観客に判断を委ねる「考えオチ」
です。
コメディーとして笑えるだけでなく、いろいろと考えさせられる映画です。わ
かりにくいところも多いので、観客がそれぞれに解釈するしかありません。こ
んな映画を撮れるのはたぶんコーエン兄弟ぐらいでしょう。そういう意味で、
オリジナリティーに満ちた作品といえます。
個人的には、あんまり難しいことを考えても混乱しそうなので、単純に笑って
楽しむことをオススメしますけど……。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年3月6日（日）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後1時50分の回
[「し」のページ] |
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