|
その街のこども 劇場版
（2010年 日本）（上映時間1時間23分）
監督：井上剛
出演：森山未來、佐藤江梨子、津田寛治
＊東京都写真美術館ホール、池袋シネマ･ロサほかにて全国公開
ホームページ http://sonomachi.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
1月16日、子供時代に神戸に住み阪神・淡路大震災を経験した勇治（森山未來）
は、出張の途中で、ふと神戸に降り立つ。駅で同じく東京からやって来た美夏
（佐藤江梨子）という女性と知り合う勇治。美夏も震災の被災者で、明朝行わ
れる"追悼のつどい"に参加するため神戸に来たのだった。そんな美夏に付き合
わされて、神戸の街を夜通し歩き続けることになる勇治。そうするうちに、2人
はかつての過酷な記憶に向き合うことになるのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
夜の神戸を歩く若い男女を通して描く震災というものの姿
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
阪神・淡路大震災から15年目の2010年1月17日にNHKで放送されたテレビドラマ
の劇場版。震災時の光景など新たな映像も追加されているそうです。
震災の時に子供だった勇治と美夏という2人の男女が、15年目を翌日に控えた1
月16日に偶然神戸で出会い、夜通し街を歩く姿をドキュメンタリータッチで追
ったドラマ。震災の記憶を深く刻み込んでいる世代ではなく、若い2人を主人公
にしたのがポイントです。
当時の大人たちほど震災がリアルではなく、しかも今は神戸から離れている2人
だけに、初めのうち震災の影はあまり感じられません。しかし、実はそれぞれ
深い心の傷を抱えています。夜の神戸の街を歩くうちに、それが次第に明らか
になっていきます。
美夏は友達を震災で亡くし、一方、勇治は震災後の父親の行動が原因で、周囲
から冷たい視線を浴びた経験があります。また、今の仕事も震災と微妙に関係
しています。そうした現実といやおうなく向き合うことになる2人。いまどきの
ごく普通の若者が向き合うからこそ、震災というものがよりリアルに観客に伝
わってきます。
手持ちカメラを中心にしたドキュメンタリータッチの映像、アドリブ的な雰囲
気もある自然なセリフも効果的です。
後半、美夏の亡き友人の父親のマンション近くのシーンが圧巻です。勇治に背
中を押される形で父親に会いに行く美夏。その後、ドラマの中で涙する美夏と
同じように、不覚にも自分も涙してしまいました。
ラストの公園での追悼のつどいも印象的。震災がいかに多くの人を深く傷つけ
たのかがよくわかるのと同時に、絶対に風化させてはいけないことを痛感させ
られました。
井上剛の演出、渡辺あやの脚本、そして森山未來、佐藤江梨子の演技、すべて
が素晴らしい！！！
テレビで放送された時にも観ましたが、何度観ても良い作品です。特にテレビ
で観なかった方はぜひどうぞ。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年1月26日（水）池袋シネマ・ロサにて。午後5時の回
[「そ」のページ] |
|