東京公園


(2011年 日本)(上映時間1時間59分)
監督・脚本:青山真治
出演:三浦春馬、榮倉奈々、小西真奈美、井川遥、高橋洋、染谷将太、長野里
美、小林隆、宇梶剛士
*新宿バトル9ほかにて全国公開
ホームページ http://tokyo-park.jp/
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<ストーリー>
カメラマン志望の大学生の光司(三浦春馬)は、公園で家族写真を撮り続けて
いる。ある日、見知らぬ男性から「女の子を連れて公園を散歩している母親を
尾行して写真を撮ってほしい」という依頼を受けた光司は、不審に思いながら
も引き受ける。だが、親の再婚で姉弟となった血のつながらない姉、美咲(小
西真奈美)にその話をすると、彼女は突然不機嫌になってしまう。光司の幼な
じみで、亡くなった親友の元カノの富永(榮倉奈々)は、美咲の心理を理解す
るのだが……。

<レビュー>
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愛する人と向き合うことの大切さが伝わる優しい青春物語
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小路幸也の同名小説を、『Helpless』『EUREKA ユリイカ』『サッド ヴァケイ
ション』の「北九州サーガ」などで知られる青山真治監督が映画化。

カメラマン志望の青年が、ある男から子連れで公園を訪れる美しい女性を尾行
して、写真を撮るように頼まれたのをきっかけに、血のつながらない姉・美咲
や、幼なじみで親友の元カノ・富永との関係が微妙に変化していくというお話。

青山監督の過去のオリジナル作品には、殺気に満ちたギラギラした映画がたく
さんありますが、今回は原作モノということもあって、そういう作品とはかな
りタッチが違います。全体を包むのは、温かで穏やかな雰囲気。それは主人公
の青年・光司のカメラのタッチと一致します。公園に集う家族、動物園の動物
たちなど、光にあふれた優しい映像が展開します。

その中で、光司と2人の女性との関係が繊細なタッチで描かれます。それと同時
に彼に尾行を依頼した男や、光司のバイト先のマスターなど周囲の人々の生き
方も盛り込まれます。

過去の作品に比べれば抑え目ではあるものの、青山監督の個性は確実に発揮さ
れています。亡くなった親友が幽霊(?)となって、光司と生前同様に同居し
ているという描き方などもユニーク(ただし、元カノには見えない)。ちょっ
と硬い感じの文学的なセリフも、青山監督らしさの表れといえるでしょう。

ドラマは後半、光司と美咲の母親が倒れたあたりから大きく展開します。美咲
の胸に秘めた思い、それに対する光司の行動、そして、尾行依頼男の気づきと
再出発……。苦悩や戸惑いを抱えたまま、身動きの取れなかった人々が、新た
な道へと踏み出していきます。

ラストでは、富永の再出発とそこにごく自然に関わる光司が描かれます。最後
もまたポジティブで優しい終幕です。

作品全体を通して伝わってくるのは、人を愛することの喜びと苦しみ。そして、
愛する人とまっすぐに向き合うことの大切さです。劇的な展開も、ご都合主義
のハッピーエンドもありませんが、温かな余韻を残してくれる青春物語に仕上
がっています。

とはいえ、当たり障りのない青春ドラマを期待すると裏切られます。青山監督
の個性はしっかり発揮されているので、それを受け入れられるかどうかでこの
映画の評価は分かれるかもしれません。

最後にもう1つ、この映画の素晴らしいところは、女優たちがみんな輝いている
ところ。榮倉奈々、小西真奈美、そしてセリフのない井川遥の3人の魅力が十
二分に発揮されています。なかでも小西真奈美が素晴らしい! 個人的には、
彼女の演じるラブシーンだけでも十分に観る価値がある映画でした。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                            (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年6月19日(日)新宿バルト9にて。午後1時50分の回


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