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トスカーナの贋作（CERTIFIED COPY）
（2010年 フランス・イタリア）（上映時間1時間46分）
監督・脚本：アッバス・キアロスタミ
出演：ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル、ジャン＝クロード・カ
リエール、アガット・ナタンソン、ジャンナ・ジャンケッティ、アドリアン・
モア
＊ユーロスペースほかにて公開
ホームページ http://www.toscana-gansaku.com/
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＜ストーリー＞
イタリアの南トスカーナ地方の小さな村で、本物と贋作についての新刊を発表
した英国の作家ジェームズ（ウィリアム・シメル）の講演が行われる。その講
演を聞きに来ていたギャラリーの女主人（ジュリエット・ビノシュ）は電話番
号を書いたメモを残し、息子とともに退席する。まもなく、彼女のギャラリー
にジェームズが現われ、2人は車で近くの名所に散策に出かける。その後カフェ
を訪れた2人は、その店の女主人に夫婦と間違われたことをきっかけに、まるで
長年連れ添った夫婦のように振る舞い始めるのだが……。
＜レビュー＞
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"贋作"夫婦の不思議なラブストーリー
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『友だちのうちはどこ？』『桜桃の味』などで知られるイランの名匠アッバ
ス・キアロスタミ監督が、初めて母国を離れて撮影したラブストーリー。とは
いえ、かなり変わったラブストーリー。男女関係や芸術における「真贋」につ
いて、あれこれと考えさせられる不思議な映画です。
イタリアの南トスカーナを訪れたイギリスの作家が、地元で画廊を経営するフ
ランス人女性と知り合い、一緒に地元の名所を散策するというお話。
ドラマは全編2人の会話で進行。英語が中心ですが、女性がフランス人というこ
とでフランス語も飛び出します。また。舞台はイタリアなのでイタリア語もた
びたび使われます。
前半はドライブに出かけた2人の車中での会話。女性の妹のエピソードをきっか
けに、本物と贋作をめぐる熱い議論が交わされます。それなりによく練られた
会話ではあるものの、あまりに長く続くので睡魔が……。
と思ったら、そこから先は抜群に面白くなりました。カフェに入った2人は、女
主人に夫婦と間違われたことから、15年間連れ添った倦怠気味の夫婦という役
割を演じ会話を展開します。
広場で、レストランで、2人は迫真の演技を続けます。意見の違いから大声で怒
鳴りあうなど、どこから見ても本物の夫婦のようです。それどころか、そのう
ちに会話のどこまでが演技で、どこからが本物なのか、まったくわからない混
乱状態に陥っていくのでした。
作家が書いた本のテーマは、贋作。彼ら2人もいわば「贋作」夫婦。その贋作を
通して、男女の機微やそれぞれの本音が見えてくるから面白いものです。
怒鳴りあいの末に、ちょっとエロチックな場面などもあって、やがて2人の間に
は奇妙な感情が生まれます。はたして贋作が本物に転じるのか? かつて新婚の
時に泊まったという設定で訪れたホテルでの、2人の微妙な態度に思わずニヤリ。
ユニークな脚本に加え、よく考えられた映像も見どころです。鏡の中の人物、
男の顔のアップから窓外の風景へ移るラストシーンなど、印象的な映像がタッ
プリ。独特の音楽も耳に残ります。
主演のジュリエット・ビノシェ（相変わらずキレイ）は、本作でカンヌ映画祭
主演女優賞を受賞。これが映画初出演のオペラ歌手ウィリアム・シメルの演技
もなかなかでした。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年2月19日（土）ユーロスペースにて。午後2時10分の回
[「と」のページ] |
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