ツリー・オブ・ライフ(THE TREE OF LIFE)


(2011年 アメリカ)(上映時間2時間18分)
監督・脚本:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、フィオ
ナ・ショウ、ハンター・マクラケン、ララミー・エップラー、タイ・シェリダ
ン、アイリーン・ベダード、ウィル・ウォレス
*丸の内ルーブルほかにて全国公開
ホームページ http://www.movies.co.jp/tree-life/
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<ストーリー>
1950年代半ばのアメリカ・テキサスの小さな田舎町で暮らすオブライエン夫妻。
厳格な夫(ブラッド・ピット)は成功のためには力が必要だと信じ、3人の子
供に対して厳しく接する。一方、全てを運命として受け入れる妻(ジェシカ・
チャステイン)は、子どもたちを優しい愛で包み込む。そんな両親の間で葛藤
する長男のジャックは、次第に反抗的な態度を取るようになる。やがて大人に
なって実業家として成功したジャック(ショーン・ペン)は、少年時代に思い
をはせる……。

<レビュー>
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奇才テレンス・マリックによる壮大な映像叙事詩
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『天国の日々』『ニュー・ワールド』などのテレンス・マリック監督による壮
大な映像叙事詩。第64回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞しました。

冒頭で引用される旧約聖書「ヨブ記」。それに続いて、「人間は世俗に生きる
か、神に運命を委ねて生きるか二つに一つ、どちらかを選択しなければならな
い」といった言葉が飛び出します。これって新手の宗教映画?

いえいえ、そういうわけではありませんが、宗教や哲学など多様で奥深いテー
マを抱えた映画なのは確かです。

最初に登場するのは、1950年代半ばのテキサスで暮らすオブライエン夫妻(演
じるのはブラッド・ピットとジェシカ・チャステイン)。3人の子供のうち次
男が死んだことが、さりげなく明かされます。

続いて舞台は現代。成長して実業家として成功した夫妻の長男のジャック(シ
ョーン・ペン)が、悔恨の思いで少年時代を回想します。

そして、描かれるジャックの少年時代……と思ったら、あらまあビックリ。な
んと宇宙誕生や生命創生を思わせるスケールの大きな映像の連打です。さらに
原始時代の恐竜たちの世界。松田優作ではないけれど「なんじゃこりゃ〜
〜!」と叫びたくなるような展開です。

ひとしきりそうした映像が続いた後に、ようやく描かれるジャックの母の妊娠、
そして次男の出産。ということは、前フリのあの映像は、生命の連鎖を示して
いるのでしょうか。

そこからはジャックの少年時代の話が続きます。一見平凡で幸せそうな夫妻の
元で成長していくジャックと2人の弟たち。しかし、父は自身が音楽家の夢を
あきらめ裕福でもないことから、成功のためには力が必要だと信じ、3人の子
供に対して厳しく接します。それに対して母親は神を深く信じ、全てを運命と
して受け入れようとします。

そんな中で、次第に父に反抗的な態度を取るようになり、父に逆らえない母さ
えも嫌うようになるジャック。そんな彼と弟たちの関係、同世代の子供の事故
死、ジャックが手を染めた小さな悪事など様々な出来事が描かれます。何やら
不安定な映像は、一家の置かれた微妙な立場を表しているようです。

というわけで基本は家族のドラマですが、そこには聖と俗、生と死、善と悪、
富裕と貧困、強者と弱者など、様々な対立概念が持ち込まれ観客の思考を刺激
します。テーマらしきものはいくつもばら撒かれるものの、それを明確な結論
に導こうとはしません。なので、おそらく観る人によって、それぞれ受け止め
方が違うはずです。

やがて一家のドラマは、父の勤務先の工場閉鎖によって終幕を迎えます。そこ
でようやく子供たちに対する接し方を反省する父。

ラストは幻想的なシーン。この世とあの世の交流?生者と死者の魂のふれあ
い?明確には理解できないものの、許しと和解を感じさせる温かで前向きな終
幕です。

まあ正直なところ、単純に感動できたり、楽しくなる映画ではありません。
テーマが深遠すぎて理解不能な人も多いでしょう。そのへんは覚悟して鑑賞を。

ただし、映像はピカイチ。滝や森などの大自然の映像をはじめ、観たこともな
いような驚きの映像の連続。すべてがアートのようなシーンです。それを体験
するだけでも観る価値があるのでは?

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年8月13日(土)丸の内ルーブルにて。午後4時の回


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