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わたしを離さないで（NEVER LET ME GO）
（2010年 イギリス・アメリカ）（上映時間1時間45分）
監督：マーク・ロマネク
出演：キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイト
レイ、シャーロット・ランプリング、イゾベル・ミークル＝スモール、チャー
リー・ロウ、エラ・パーネル、サリー・ホーキンス
＊TOHOシネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマほかにて公開
ホームページ http://movies.foxjapan.com/watahana/
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＜ストーリー＞
緑豊かな田園地帯にある寄宿学校ヘールシャムでは、外界と隔絶された中で、
徹底した管理教育が行われていた。そこで学ぶキャシー、ルース、トミーは、
幼い頃から仲良く一緒に育ってきた。やがて、３人は18歳になってヘールシャ
ムを出て、農場のコテージで共同生活を始める。だが、ルースとトミーが恋人
同士になったことから彼らの友情は崩壊していく……。
＜レビュー＞
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悲しさと切なさに包まれたSFタッチの青春ストーリー
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SF的な設定を使った詩情あふれる青春ストーリー。映画化された『日の名残
り』で、ブッカー賞を作家したカズオ・イシグロの同名小説が原作です。
前半は、田園地帯にある寄宿学校ヘールシャムで学ぶキャシー、ルース、ト
ミーという３人の子供たちの日常が生き生きと描かれます。彼らは、一見ごく
普通の子供たち。しかし、その学校生活はどこか奇妙です。外界からは完全に
遮断され、「常に体の内と外を清潔に」することを徹底されます。いったいこ
の学校は何なのか？ 彼らは誰なのか？ 成長して介護士となったキャシーが
登場する冒頭のシーンが、なおさら謎を深めます。
まもなくその謎が、おぼろげながら明かされます。ある先生が、子供たちに向
かって彼らの過酷な宿命を告げます。
中盤は、キャシー、ルース、トミーの青春の愛憎劇が、彼らが背負った悲しい
宿命を背景に描かれます。18歳になり、学校を出て、「来るべき日」まで自由
に暮らすことが許される中で、ルースとトミーは恋人同士となり、キャシーは
おおいに苦しみます。「本当に愛し合う２人には、猶予期間が与えられる」と
いう噂が、その愛憎劇に深みを与えます。
そして後半に描かれるのは、しばらく経ってからの３人。すでにキャシー以外
は「提供」が開始されています。そんな中で、久々の再会を果たす３人でした
が……。
わずかな光にすがったトミーの最後の慟哭が胸を熱くします。
近未来SF的な素材ながら、時代を今から少し前に設定したおかげで、登場人物
の思いがリアルに心に響いてきます。
そして何よりも、マーク・ロマネク監督による静謐で抑制的なタッチが印象的。
３人の若者に反乱を起こさせるなど、もっと派手な映画にすることも可能だっ
たはずですが、それとは対極の作風が独特の情感を生み出し、ごく自然に観客
の涙を誘います。田園や海辺などの美しい風景も心に染みます。
若手ながら、いずれも実力のあるキャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフ
ィールド、キーラ・ナイトレイの繊細な演技も見もの。
登場人物たちの悲しさと切なさにあふれたドラマに涙するだけでなく、人間の
生と死について考えさせられる佳作。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年3月27日（月）TOHOシネマズ シャンテにて。午後2時10分の回
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