ウィンターズ・ボーン(WINTER'S BONE)


(2010年 アメリカ)(上映時間1時間40分)
監督・脚本:デブラ・グラニック
出演:ジェニファー・ローレンス、ジョン・ホークス、シェリル・リー、デイ
ル・ディッキー、ギャレット・ディラハント、ローレン・スウィートサー、ア
イザイア・ストーン、アシュリー・トンプソン、ケヴィン・ブレズナハン
*TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://www.wintersbone.jp/
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<ストーリー>
アメリカ中西部ミズーリ州の村に住む17歳の少女リー(ジェニファー・ローレ
ンス)は、心を病んだ母親に代わって幼い弟と妹の世話をして暮らしていた。
そんなある日、とうの昔に家を出て逮捕された父親が、自宅と土地を保釈金の
担保にして失踪する。このまま裁判に出廷しなければ家を没収されてしまうた
め、リーは自ら父親捜しに乗り出すのだが……。

<レビュー>
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過酷な運命に立ち向かう少女の毅然とした姿が胸を打つ
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過酷な運命にさらされながら、家族を守るために毅然として立ち向かう少女の
物語。2010年サンダンス映画祭でグランプリを受賞するなど各地の映画祭で高
く評価されました。

17歳ながら、病気の母に代わって幼い弟と妹の面倒を見て一家を支える少女
リー。だが、逮捕されたドラッグディーラーの父親が、自宅を保釈金の担保に
して失踪。このままでは、住む場所を失うリーは、一人で父を探すことを決意
する……。

リーの父親探しは、単なる人探しではありません。彼女たちの住む村は麻薬に
汚染された共同体。そこには厳しい掟があり、リーの父親はそれに背いた裏切
り者。親族はじめ村人は協力を拒否し、リーに捜索をやめるように忠告します。
それでも突き進むリーに、やがて恐ろしい魔手が忍び寄ります。

そんな危険な状況下で、満身創痍になりながらも、家族を守るためにまったく
ひるまず立ち向かうリー。そのたくましさに感心すると同時に、彼女をそうい
う境遇に追い込んだ世の中を考えると切なくなってきます。

過酷というひと言で片付けられないほどの貧困。麻薬の蔓延など、アメリカの
置かれたどん詰まりの現実がいやおうなく突きつけられます。どうしようもな
くなったリーが、金を得るために軍隊に入ろうとするあたりにも、現在のアメ
リカ社会が顕著に反映されています。

寒々しい地元の空気感。荒廃した人々の心。登場人物の微妙な心の揺れ動き。
それらを巧みに表現したデブラ・グラニック監督の脚本、演出が光ります。

クライマックスでリーを待ち受けているのは、父の消息に関する恐ろしい出来
事。リーにとってあまりにもつらい試練です。

しかし、観終わった後味はけっして悪くありません。ラストには明確でないな
がら、かすかな希望の火らしきものも見えます。それはリーが試練を乗り越え
て、また一つ成長した証ともいえます。彼女のたくましさが、未来の扉を少し
ずつこじ開けたのでしょう。

登場人物を単純に善悪に分けて描くのではなく、多様な側面をキッチリ描いて
いるのも、この映画の素晴らしいところ。特に麻薬常用者で当初はリーを邪険
に扱っていた叔父のティアドロップの後半での行動が印象的です。

主人公のリーを演じたジェニファー・ローレンスの表情が絶品。アカデミー賞
で主演女優賞にノミネートされたのも納得(作品賞、脚色賞、助演男優賞(ジ
ョン・ホークス)にもノミネート)。

地味ですが、心を打つ秀作です。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2011年11月20日(日)新宿武蔵野館にて。午後1時30分の回


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