|
洋菓子店コアンドル
（2010年 日本）（上映時間1時間55分）
監督：深川栄洋
出演：江口洋介、蒼井優、江口のりこ、尾上寛之、粟田麗、山口朋華、ネイサ
ン・バーグ、 嶋田久作、加賀まりこ、鈴木瑞穂、佐々木すみ江、戸田恵子
＊新宿バルト9、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ http://www.coin-de-rue-movie.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
東京で評判の洋菓子店"パティスリー・コアンドル"に、鹿児島から上京した臼
場なつめ（蒼井優）が、恋人・海に会うためやってくる。だが、働いているは
ずの海はすでに店を辞めていた。行く宛てのないなつめは、オーナーの依子
（戸田恵子）に頼んで店で働きながら海を探すことにする。そんなある日、な
つめは時々店に現われる評論家の十村遼太郎（江口洋介）が、かつて伝説のパ
ティシエと呼ばれていたことを知るのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
自意識過剰の女の子の成長と伝説のパティシエの再起
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タイトルどおりにコアンドルという洋菓子店を舞台にしたドラマです。
東京に出て洋菓子店で働いているはずの恋人を追って鹿児島から上京したなつ
め。しかし、恋人はすでに店をやめていて、行くところのない彼女は頼み込ん
で店で働くことにします。その合間に恋人を探すものの……。
自意識過剰で負けん気の強いなつめ。そんな彼女の失恋からの立ち直りと、洋
菓子職人としての成長を描いたドラマです。ちょっと間違えば嫌な女になりそ
うな主人公も、蒼井優がナチュラルに演じると魅力的に見えてきます。
そして、そこに絡むのが江口洋介演じる元伝説のパティシエの十村。自分の不
注意から娘を失いパティシエをやめて、そのショックから立ち直れない彼の再
生のドラマも描かれます。
ストーリー自体はよくある話です。しかし、繊細かつ生き生きとした描写によ
って、心に染みる温かなドラマになっています。
深川栄洋監督はセリフ以外の部分で、いろいろなことを伝えるのがうまい監督。
たとえば、閉店した洋菓子店になつめが入ったところを、延々と映像のみで映
すシーン。それだけで主人公の心情をリアルに表現します。十村の悲しみ、苦
悩なども同じくセリフ以外の部分で繊細に表現していきます。
脇役の使い方も味があります。オーナー役の戸田恵子に加え、なつめといつも
衝突する先輩役の江口のりこが絶品。加賀まりこ演じる近所の老婦人のエピ
ソードで、観客を泣かせる仕掛けも見事。
そして、登場する数々のお菓子のおいしそうな映像ときたら……。お菓子好き
ならずとも食欲をそそられ、思わずドラマへ感情移入してしまいます。
後半、突然ピンチを迎えるコアンドル。十村に助っ人を頼むなつめ。はたして
彼のとった行動は？
ラストもベタな展開。それでも被写体との絶妙な距離感で、なつめと十村の新
たな旅立ちを印象付けます。心が温まる余韻の残るエンディングです。
驚くようなことは何もない、ごくありふれた話を見応えのあるドラマにするの
は、実はかなり難しいこと。それをやってのけた心温まる佳作です。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2011年2月12日（土）シネ・リーブル池袋にて。午後4時25分の回
[「よ」のページ] |
|