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別離（JODAEIYE NADER AZ SIMIN）
（2011年 イラン）（上映時間2時間3分）
製作・監督・脚本：アスガー・ファルハディ
出演：レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・
バヤト、サリナ・ファルハディ、ババク・カリミ、メリッラ・ザレイ
＊Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.betsuri.com/
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＜ストーリー＞
テヘランに暮らすナデル（ペイマン・モアディ）とシミン（レイラ・ハタミ）
の夫婦。妻のシミンは娘の将来を考え、海外への移住を計画するが、夫のナデ
ルはアルツハイマー病の父を残して行けないと拒否する。夫婦は裁判所に離婚
を申請。シミンは家を出て実家に移る。一方、ナデルは父の介護のためラジ
エー（サレー・バヤト）という女性を雇う。だが、ある日、ナデルはラジエー
が父をベッドに縛り付けて外出したことに怒り、彼女を家から追い出してしま
う。それをきっかけに思わぬ事態が起きて……。
＜レビュー＞
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ミステリーと人間ドラマが融合した緊迫感に満ちたイラン映画
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アカデミー外国語映画賞を受賞したイラン映画。ミステリーと人間ドラマが見
事に融合し、イランの社会状況も的確に描きこまれた秀作です。
物語の発端は夫婦の離婚話。娘のために外国へ移住しようとする妻シミン。そ
れに対してアルツハイマーの父を残していけないと拒否する夫ナデル。夫婦は
離婚を申請するものの、すぐには認められずとりあえず別居します。
そんな中、ナデルは父の面倒を見てもらうためにラジエーという女性を雇いま
す。しかし、ある日、２人の間にトラブルが起きて、ラジエーとその夫がナデ
ルを告訴します。
判事の前で展開される両者の主張は真っ向から食い違います。そこにナデルの
娘や教師が証人として加わります。当然ながら、別居中のナデルの妻シミンも
関わらざるを得ません。
はたして誰が真実を語り、誰がウソをついているのか。虚々実々のスリリング
な対立劇が展開され、スクリーンから目が離せません。
同時に描かれるのは２つの家族の愛憎劇。離婚話の真っ只中にあるナデルとシ
ミンと娘、ナデルを告訴したラジエーと夫と幼い娘。ワケあり家族がお互いに
かばいあったり、非難しあったりして複雑かつリアルな人間ドラマが展開され
ます。
そして、これらの背景として見えてくるのがイランの社会状況。西欧文化に感
化されて外国への移住を希望する中産階級の人々、イスラム教を生活の中心に
据えて伝統的な生活をする人々。両者の狭間で揺れ動くイランの現在が映し出
されます。
特に印象的なのが、伝統的な生活を送る人々が、日常で迷ったことがあればす
ぐに聖職者に相談するシーン。彼らが真実を語るきっかけも、聖職者の言葉で
す。一方、近代化の洗礼を受けた人々は、それとは別な動機で真実を告白しま
す。
ただし、イランの社会状況について批判したり賛美しているのではなく、現実
をそのまま見せているのが、この映画の素晴らしいところ。高齢者介護の問題
や離婚問題など、日本と共通するような事情も見えてきます。
ミステリーとしても、人間ドラマとしても、社会派の映画としても見応え十分
の作品です。アスガー・ファルハディ監督は、ベルリン国際映画祭で監督賞に
輝いた前作『彼女が消えた浜辺』でも、似たような構図のドラマを展開しまし
たが、今回はさらにパワーアップした感じです。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年4月15日（日）Bunkamuraル・シネマにて。午後1時50分の回
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