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ふがいない僕は空を見た
（2012年 日本）（上映時間2時間22分）
監督：タナダユキ
出演：永山絢斗、田畑智子、窪田正孝、小篠恵奈、田中美晴、三浦貴大、銀粉
蝶、梶原阿貴、吉田羊、藤原よしこ、山中崇、山本浩司、原田美枝子
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.fugainaiboku.com/
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＜ストーリー＞
高校生の卓巳（永山絢斗）は、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・里美（田畑
智子）と出会い、彼女の誘いでコスプレでのセックスを楽しむようになる。だ
が、同級生の七菜に告白されたことから、里美との情事を終わらせようとする。
一方、里美は姑から「孫の顔が見たい」と責められ続けていた。そんな中、あ
る騒動が持ち上がり、卓巳は家に引きこもるようになる。同じ頃、卓巳の友
人・福田（窪田正孝）は、コンビニのバイトをしながら認知症の祖母と極貧生
活を送っていた……。
＜レビュー＞
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「性」から「生」へと広がる世界。もがく人々をやさしく包む
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山本周五郎賞受賞の窪美澄の短編集を『百万円と苦虫女』のタナダユキ監督が
映画化。原作は読んでいませんが、日本映画ではあまり見ないオリジナリティ
にあふれた作品に仕上がっています。
ドラマの入り口はズバリ「性」。冒頭から高校生の卓巳と主婦の里美とのコス
プレ・セックスが描かれます。前半はその２人が中心のドラマ。義母に子作り
の強烈なプレッシャーをかけられる里美。その境遇が卓巳との情事の動機の一
つにはなっているものの、それだけが理由ではありません。
というよりも、この映画に登場する人々の行動の動機は、すべてが明確に説明
できるわけではありません。だからこそ、逆にリアリティを感じさせるのが面
白いところ。
初めのうちは、一見、エロなコメディかと思うような展開。しかし、その中で
卓巳の母親が重要な役割を果たします。彼女の仕事は助産師。そのため卓巳は
日常的に出産＝「生」に接しています。それをきっかけに、この映画のテーマ
は「性」から「生」へと広がっていきます。
それがはっきりと伝わってくるのが後半。里美との情事がきっかけで、世間か
ら冷たい目にあい、引きこもるようになる卓巳。
それに代わってドラマの中心に据えられるのが、卓巳の同級生の福田。借金ま
みれで家を出た母に代わって、コンビニでバイトしながら認知症の祖母の面倒
を見る彼の心の内が描かれます。夢も希望もなく、抜け出せない現状でもがく
福田。
さらに、彼に手を差し伸べようとする病院の息子、コンビニのバイト仲間の女
子高生など周囲の様々な人々も登場。それらすべての人物が欠陥だらけで、そ
れぞれに問題を抱え、もがき苦しんでいます。一見何の問題もなさそうな卓巳
の母まで、ある問題を抱えています。
そんな様々な人間模様を通して、やがて見えてくるのはポジティブなメッセー
ジ。「誰だって迷ったり失敗しながら生きている」「生きていれば何とかな
る」。人生でもがく人々に対して、タナダ監督は背中をやさしく押してあげま
す。
残念なのは、短編集が原作のせいか、全体の構成のバランスが悪いところ。そ
して、前半にあまりにも露骨なセックスシーンが多いため、18禁の映画になっ
てしまったこと。本当なら高校生あたりにも見て欲しい映画ですけどね。
冒頭の「性」の世界が最後には「生」への讃歌へと広がっていく、ユニークな
秀作。田畑智子の演技も絶品（別に裸になったからではありません）。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年11月24日（土）テアトル新宿にて。午後4時20分の回
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