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ヘルタースケルター
（2012年 日本）（上映時間2時間7分）
監督：蜷川実花
出演：沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ、綾野剛、水原希子、新井浩文、鈴
木杏、寺島進、哀川翔、窪塚洋介、原田美枝子、桃井かおり
＊丸の内ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://hs-movie.com/
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＜ストーリー＞
完璧な美貌とスタイルを武器に芸能界でトップスターとなったモデル・りりこ
（沢尻エリカ）。だが、その美貌はすべて全身整形で手に入れたもので、免疫
抑制剤の服用が欠かせなかった。そんな秘密を抱えながら、欲望渦巻く芸能界
を生きるりりこだったが、整形の後遺症は確実に彼女の身体を蝕んでいく。そ
んな中、美容クリニックをめぐる事件を追う検事が彼女に接近し……。
＜レビュー＞
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沢尻エリカの存在がすべての「怪」映画
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第8回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞した岡崎京子の同名コミックを、『さく
らん』の蜷川実花監督が映画化。
全身整形で究極の顔とボディを手に入れた女りりこ。秘密を抱えながら生きる
彼女の欲望に満ちた人生を描いたドラマです。
蜷川監督はもともと写真家で、デビュー作『さくらん』もドラマよりも映像が
光った映画。今回もドラマ的にはかなりアラの目立つ映画でした。
主人公りりこは、欲望がそのまま服を着たような女。全身整形によって手にし
たスターの座を維持するため、事務所社長の指示のもと、あらゆる手段を駆使
します。しかし、整形の後遺症に蝕まれ、後輩モデルに自分の地位を脅かされ、
次第に精神的に追い詰められていきます。その感情をぶつけるターゲットとな
る女マネージャー、りりこを手術した美容クリニックを追う検事なども登場。
様々なエピソードが入り乱れます。
しかし、それらのエピソードが散漫で結びつきが弱いため、ドラマが効果的に
回っていきません。特に検事をめぐるエピソードが表面的で、深みがありませ
ん。
主人公の苦悩や葛藤を何かというと性的な方向に持って行くのも、個人的には
気に入りません。あれじゃただの悪趣味な淫乱女にしか見えないよ。
渋谷あたりの女子高生を再三登場させて、りりこの生き方の源泉となる「何が
何でも美しくなりたい」という女性の欲望をクローズアップしているものの、
それもあまり効果的とはいえません。人物描写の底が浅すぎるのも致命的。
ただし、今回も映像はピカイチ。何気ない日常のシーンから、りりこの見る幻
覚まで、極彩色の色彩を使ったアートな映像がテンコ盛り。ありがちなわりに
冗長なクライマックスからラストシーンまでの展開も、あまりにも映像が美し
いのでつい見入ってしまいました。
そして、何よりもこの映画を光らせているのが、りりこ役の沢尻エリカの存在。
スキャンダラスなイメージをそのままに、本人も周囲もそれを意識しながら構
築した演技は、まさに今しかできない一度限りのもの。
彼女の高笑い、怒り、罵り、涙、すべてが、スキャンダラスでドラマティック。
アブなすぎてたまりません。彼女がいたからこそ成立した映画。これはもはや
ある種の「怪」映画です。
脇を固める大物女優たちの演技も見もの。イメージどおりの事務所社長役の桃
井かおりや危険な美容外科医の原田美枝子はともかく、りりこにいたぶられま
くるドＭの女マネージャー役の寺島しのぶの演技が凄すぎ。沢尻とのレズシー
ンまで演じるとは。
ドラマ的には薄味で物足りないものの、沢尻エリカという存在によって他に類
のない映画となったこの作品。そういう意味で一見の価値はあるかも。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年7月17日（火）新宿ピカデリーにて。午後1時の回
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