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ヒミズ
（2011年 日本）（上映時間2時間9分）
監督・脚本：園子温
出演：染谷将太、二階堂ふみ、渡辺哲、諏訪太朗、川屋せっちん、吹越満、神
楽坂恵、光石研、渡辺真起子、モト冬樹、黒沢あすか、堀部圭亮、でんでん、
村上淳、窪塚洋介、吉高由里子、西島隆弘、鈴木杏
＊新宿バルト9、シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://himizu.gaga.ne.jp/
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＜ストーリー＞
15歳の孤独な少年、住田（染谷将太）は、誰にも迷惑をかけずに平凡に生きる
ことを願っていた。だが、借金まみれの父はたまに家に来ては住田を殴り「お
前はいらねえ」と吐き捨てる。母も男と駆け落ちしてしまう。そんな中、クラ
スメートの茶沢（二階堂ふみ）は、住田の実家である貸しボート屋を手伝うな
ど彼を励ます。だが、ある日、住田は耐え切れずに父を殺害してしまう……。
＜レビュー＞
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毒々しさを抑えてみずみずしく描いた孤独な少年の魂の彷徨
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『冷たい熱帯魚』『恋の罪』などで知られる園子温監督が、古谷実の同名コミ
ックスを映画化した作品。
主人公は15歳の少年、住田。モグラのようにひっそりと平凡に暮らすことを夢
見るものの、現実はあまりにも過酷。借金を抱えて失踪した父は、たまに家に
来て住田を殴り「お前はいらねえ」と吐き捨てる。母も男と家出してしまう。
そして、ある日、住田は父を殺してしまう……。
園監督らしさは、あちこちに見受けられます。やや現実離れした展開や浮き気
味のセリフはいつも通り。人間同士の激しいぶつかり合いなど、壮絶なエネル
ギーを感じさせるのもいつもと同じ。役者も、渡辺哲、吹越満、黒沢あすか、
でんでん、神楽坂恵など、過去の作品で活躍した人たちが大量出演。
ただし、今回は「猛毒エンターティメント」といわれた過去の作品ほどの毒気
はありません。園監督にしては正攻法で、孤独な15歳の少年の魂の彷徨を描い
ています（それでもけっこう変化球的なところもあるけれど）。笑える要素も
いつもほどありません。
その背景にあるのは、設定を東日本大震災後にして、物語的にも、映像的にも
（震災後の瓦礫の映像がたくさん登場）、そこを大きくクローズアップしてい
るせいでしょう。
それでも、みずみずしい青春映画としての魅力がタップリ。過酷な運命の中で、
もがき苦しむ主人公・住田の姿が心に強く響いてきます。特に後半、「おまけ
の人生」と決めて、社会の敵を殺そうとする姿が印象的。
そして、彼を支える同級生の女の子・茶沢の姿も胸に迫ります。当初はただの
ストーカーにしか思えない彼女ですが、実は彼女も傷つき孤独を抱えているこ
とがわかります。そんな２人が泥だらけになって殴り合う壮絶なシーンが絶品。
同じく住田を温かく見守り支えるホームレスたちの姿も心に残ります。その中
の一人が「あの子に未来を託したい」と訴えるところは、ストレートすぎると
はいえ、素直に胸が熱くなります。
破滅を選ぶのではなく、前に向かっていく結末にも心を動かされました。冒頭
でいったん住田が否定した教師の言葉（「花」）を肯定。ラストの住田と茶沢
の「頑張れ！」の声は、震災後の日本人に向けられたものなのかも……。まあ、
そういうところを「園監督らしくない」と嫌う人もいそうですが。
主演の染谷将太の素直さと屈折が混在した演技に加え、二階堂ふみの文字通り
の熱い演技が見事。なにやら将来の大物女優の予感も……。
個性派の園監督にしては、ごくまっとうでみずみずしい青春映画。過去の園作
品を意識せず、白紙で観ることをお勧めします。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
[「ひ」のページ] |
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