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鍵泥棒のメソッド
（2012年 日本）（上映時間2時間8分）
監督・脚本：内田けんじ
出演：堺雅人、香川照之、広末涼子、荒川良々、森口瑤子、小山田サユリ、木
野花、小野武彦
＊シネクイントほかにて全国公開
ホームページ http://kagidoro.com/
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＜ストーリー＞
自殺願望のある売れない役者・桜井武史（堺雅人）は、ある日、銭湯でコンド
ウ（香川照之）という男が転倒して記憶を失う現場に居合わせる。出来心でロ
ッカーの鍵を盗んで、コンドウになりすます桜井。ところが、コンドウは誰も
顔を見たことがない伝説の殺し屋で、桜井は恐ろしい殺しの依頼を引き受ける
はめになる。一方、自分を桜井だと思い込んでしまったコンドウは、真面目に
演技の勉強を始める。そんなコンドウに女性編集者の水嶋香苗（広末涼子）が
好意を持つのだが……。
＜レビュー＞
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対照的な2人の入れ替わりのドラマ。緻密な脚本が光る
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『運命じゃない人』『アフタースクール』の内田けんじ監督の新作。今回も前
２作同様にオリジナル作品です。
殺し屋のコンドウが銭湯で転倒し記憶喪失に。それを見ていた自殺しかけた売
れない役者の桜井が、ロッカーのカギをすり替えてコンドウになりすます……。
というのが物語の導入部。全然違う2人が入れ替わるという話はよくありますが、
内田監督らしい緻密な脚本によって抜群に楽しいコメディに仕上がっています。
カギをすり替えたものの、相手の男が何者かわからない桜井。それが次第にト
ンデモナイ人物だとわかり始めて窮地に追い込まれます。一方、コンドウは記
憶を失ったまま、自分が桜井だと思い込んで役者の勉強を始めます。行き当た
りバッタリでルーズな桜井と、マジメで几帳面なコンドウというキャラの対比
が効果的です。
そして、そこにからむのが結婚願望の強い女性編集者の香苗。相手もいないの
に結婚の日取りまで決めてしまい、それから相手を探すというユニークな女性
です。
そんな3人の運命を狂わせるのが、冒頭で描かれるコンドウが犯した殺人。それ
をめぐって、3人に加え、依頼主のヤクザ、殺された社長の愛人などが入り乱れ
ます。
前半はややテンポが悪くてダルイ感じもしましたが、後半は面白さが加速。前
半で張られた周到な伏線が、後半で見事に収束されるあたりも、いかにも内田
監督の映画らしいところ。
『アフタースクール』ほどの大どんでん返しはないものの、二転三転する先の
読めない展開は見応え十分。ただの殺し屋に思えたコンドウの意外な正体が見
えたり、桜井が思わぬ行動に出たりとまったく飽きさせません。
もちろん笑いもタップリ。コンドウが役者の桜井に演技指導をする場面をはじ
め、笑えるシーンの連続です。
ラストはコンドウと香苗のロマンスにホッコリと火をともし、さらにエンド
ロールの途中で桜井にまでロマンスをプレゼントする粋な結末。
飄々とした味の堺雅人と、重みのある香川照之、コメディエンヌぶりが堂に入
っている広末涼子と俳優陣も強力です。
＜結論＞文句なしに楽しいコメディー。内田監督のいつもながらの緻密な脚本
が光ります。エンターティメントとしての完成度はかなりのもの。
これで人生の生き直しとか、消したい過去や消してはいけない過去など、深み
のある人間ドラマもキッチリ見せてくれれば言うことなしですが、そこまで求
めるのは欲張りすぎ？
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（87点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年9月15日（土）池袋HUMAXシネマズ4にて。午後1時40分の回
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