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かぞくのくに
（2011年 日本）（上映時間1時間40分）
監督・脚本：ヤン・ヨンヒ
出演：安藤サクラ、井浦新、ヤン・イクチュン、京野ことみ、大森立嗣、村上
淳、省吾、金守珍、諏訪太朗、宮崎美子、津嘉山正種
＊テアトル新宿ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://kazokunokuni.com/
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＜ストーリー＞
1997年、かつて16歳で「帰国事業」に参加して北朝鮮に移住したソンホ（井浦
新）が、、脳腫瘍の治療のために25年ぶりに日本に再入国を果たす。滞在予定
はわずか３ヵ月。それでも妹のリエ（安藤サクラ）をはじめ家族は、ソンホと
の再会を喜ぶ。旧友たちとも奇跡の再会を果たすソンホ。だが、彼の隣には監
視役の男が常に同行していた。そんな中、「３ヵ月では責任が持てない」と医
師から治療を断られてしまうソンホ。そしてまもなく思わぬことが……。
＜レビュー＞
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権力に翻弄される家族の物語を余韻の残る語り口で描く
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『ディア・ピョンヤン』『愛しきソナ』と、自らの家族を素材にしたドキュメ
ンタリーを撮ってきた在日コリアン２世のヤン・ヨンヒ監督が、初めて手がけ
た劇映画。今回もベースになったのは、自らの実体験です。
冒頭に簡単な説明があります。1959年から20数年間にわたって、在日朝鮮人と
その家族が日本から北朝鮮へ集団で移住した"帰国事業"について。
その帰国事業で16歳で北朝鮮に渡ったソンホが25年ぶりに、脳腫瘍の治療のた
めに3ヶ月間の予定で帰国。妹のリエをはじめ家族は、ソンホとの再会に心を躍
らせる。しかし、ソンホの隣にはヤンという男が監視役として同行。脳腫瘍の
治療も医師から「３ヵ月では責任が持てない」と断られてしまう……。
政治がらみの問題が背景にあるだけに、かなりヘビーでツライお話。まして監
督自身の実体験がベースとあれば、感情過多になりがちです。しかし、ヤン監
督はきわめて抑制的に、淡々と描写しています。待ちわびていたソンホと家族
の再会、旧友たちとの語らい、病院での診断……。
長回しで手持ちカメラを多用する映像は、ドキュメンタリー出身の監督らしい
ところでしょうか。
俳優たちの演技も抑制的。妹役の安藤サクラ、ソンホ役の井浦新、父親役の津
嘉山正種、母親役の宮崎美子が、いずれも味のある演技を披露。
そうした抑制的なタッチを通して浮かび上がってくるのは、登場人物たちの複
雑な思い。再会の喜び、25年という時間の壁に対する戸惑い、家族同士の感情
のすれ違い、２つの国の間で翻弄される悲しみ。いくつもの思いが、スクリー
ンの上で重層的にクロスします。
そして何よりも胸を打つのが、権力に翻弄される人々のやるせない思い。それ
はソンホや家族だけでなく、ソンホの監視役の男（『息もできない』のヤン・
イクチュンが好演）からも伝わってきます。
あまりにも不条理な国家権力は、ソンホや家族を最後の最後にドン底に突き落
とします。彼らのやり場のない思いが、ヒシヒシと伝わってきます。
ちょっと生硬なセリフなど、ヤン監督自身が手がけた脚本がイマイチの感じも
しますが、それを上回る大きなものが胸に残る映画です。
政治的な視点などではなく、あくまでも家族の視点から語られる物語であると
ころが秀逸。それを通して、単なる北朝鮮批判ではなく、権力に翻弄される全
ての人々を見据えた普遍的な物語になっています。
まあ、何よりも監督自身の実体験がベースだという点が、一番説得力を持って
いますよね。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年8月10日（土）テアトル新宿にて。午後2時30分の回
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