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希望の国
（2012年 日本・イギリス・台湾）（上映時間2時間13分）
監督・脚本：園子温
出演：夏八木勲、大谷直子、村上淳、神楽坂恵、清水優、梶原ひかり、菅原大
吉、山中崇、河原崎建三、筒井真理子、でんでん
＊新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kibounokuni.jp/
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＜ストーリー＞
東日本大震災から数年後。長島県で酪農を営む小野泰彦（夏八木勲）は、妻の
智恵子（大谷直子）、息子の洋一（村上淳）とその妻いずみ（神楽坂恵）と暮
らしていた。そんなある日、巨大地震が発生。原発が事故を起こし、半径20km
圏内が警戒区域に指定される。小野家は圏外となるが、隣家の鈴木家は強制退
避を命じられる。自らは残る決断をした泰彦だが、洋一には夫婦で自主避難す
るよう説得する。渋々避難する洋一。まもなく、避難先でいずみの妊娠が判明
するが、彼女は放射能恐怖症になる。一方、避難所生活の鈴木家では、長男ミ
ツルが恋人ヨーコと一緒に、彼女の両親を探し歩く……。
＜レビュー＞
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反原発のメッセージを込めた園子温のリアルタイム・ムービー
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鬼才・園子温監督が原発事故をテーマに描いたドラマ。
舞台は東日本大震災から数年後の日本。長島県というところで巨大地震が起き、
原発事故が発生。原発から半径20km圏内が警戒区域に指定される……。
というわけで、そこに住む２つの家族のお話です。ギリギリで圏外となった小
野家では、父親が認知症の妻とともに家に残ることを決意。同時に、息子には
夫婦で自主避難するように説得します。
一方、避難所暮らしとなった鈴木家では、長男ミツルが恋人ヨーコと一緒に、
彼女の両親を探して歩きます。
園監督といえば、過去にも『冷たい熱帯魚』『恋の罪』など実際の事件を素材
にした作品があります。しかし、それらは事件からかなり時間が経って、大胆
にフィクションとしてアレンジしたもの。その大胆さが大きな魅力でした。
それに対して、今回は今まさに進行中の原発事故のお話。いわばリアルタイ
ム・ムービーなだけに、さすがにいつものような大胆さはありません。その分、
エンターティメントとしての魅力にはやや欠ける気がします。その代わり、フ
ィクションであっても、現場に身を置いたようなアルさや緊迫感が伝わってき
ます。
いつもより控えめとはいえ、園監督らしさもあちこちに見えます。過剰で暴走
気味のセリフの嵐、息子の妻の放射能恐怖症が生み出す笑い、観客の涙腺を刺
激する家族の別れのシーンなど、印象的なシーンが満載。
ラストで一瞬スクリーンを凍らせつつ、「愛」を前面に出してかすかな希望を
見せるあたりも、好感の持てる展開です。
それよりなにより、ドキュメンタリーを除けば、ほとんど誰も取り上げようと
しない原発をテーマに、反原発、反権力のメッセージを込めつつ、こういう映
画を撮った園監督の熱い心意気が感じられます。聞くところによると、今後も
こうしたテーマの映画を撮るらしいので注目しましょう。
役者では夏八木勲と大谷直子の夫婦が抜群の存在感。２人のおかげで、単なる
現状告発の社会派映画ではなく、家族を描いた人間ドラマとしてきちんと成立
しています。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（85点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年10月21日（日）新宿ピカデリーにて。午後12時40分の回
[「き」のページ] |
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