|
ＫＯＴＯＫＯ
（2011年 日本）（上映時間1時間31分）
監督・脚本・企画・撮影・編集・製作：塚本晋也
出演：Cocco、塚本晋也
＊テアトル新宿ほかにて全国公開
ホームページ http://www.kotoko-movie.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
都会で幼い息子の大二郎と暮らす琴子（Cocco）。精神のバランスを崩し、歌っ
ている時以外は世界が二重に見える彼女は、常に恐怖を感じ、息子を守ろうと
する気持ちが強迫観念となってしまう。まもなく彼女は周囲に幼児虐待を疑わ
れ、大二郎は沖縄に暮らす姉のもとへ預けられる。そんなある日、彼女の歌に
魅了された小説家・田中（塚本晋也）が近づいてくる。田中の献身的な愛に支
えられて、次第に心の平静を取り戻す琴子だったが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
塚本晋也＋Coccoのコラボによる壮絶で衝撃的すぎる映画
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『鉄男』『六月の蛇』などの塚本晋也監督と、シンガーソングライターのCocco
とのコラボレーションによる作品。あまりにも壮絶で衝撃的すぎる映画です。
簡単に言えば精神のバランスを崩した女の人の話。シングルマザーで赤ん坊を
育てているものの、いつも不安を抱き（子供を高いところから落としてしまう
のではないか、とか）、自傷行為を繰り返し、さらに世界が二重に見える琴子。
世界が１つに見えるのは歌っている時だけ。
冒頭から描かれる彼女の異常ぶりの描写がハンパではありません。手持ちカメ
ラで撮る極端なアップは壮絶の一語。爆発するエネルギーに圧倒されてしまい
ます。それ以外のシーンも含めて、リアルで痛々しさにあふれています。愛す
るわが子を守りたい一心でどんどんおかしくなるその姿が、観客の心を直撃し
ます。
その後、赤ん坊は沖縄の姉に預けられます。しばらく経って会いに行くことを
許された時の琴子の描写も、ありきたりではありません。爆発的な喜びや別れ
のつらさがスクリーンを覆い尽くします。
やがて有名作家・田中（塚本監督自身が演じる）がストーカーとなって彼女の
前に現れ、献身的な愛を捧げるようになります。そのようすは規格ハズレ。あ
まりにもぶっ飛んだ献身ぶりが、笑いさえ誘ってしまいます。この笑いは塚本
監督の計算なのだろうか？
ともあれ、田中のおかげで心の平静を取り戻し、ようやく世界が１つになる琴
子。ところが……。
ここからは終幕に向かって怒涛の展開。田中の唐突な消え方、再び現われた子
供の姿、琴子の心の病の再発、そしてあまりにもおぞましい出来事。
その後に映される様々な仕掛けを使ったアートな世界は、琴子の心象風景なの
か、あるいは幻想なのか。何にしても不思議で妖しいシーン。
そして迎える結末。それは悲しくて切ない展開。ただし、ラストにはかすかな
希望を感じさせるサプライズが用意されているので、絶望的な気持ちのまま席
を立つことはないはず。
まあ、とにかくケタハズレのエネルギーを持つ映画です。凄まじい緊張感と痛
みが観客にも伝わってきます。
わかりやすい映画ではないので、誰にでもオススメはできませんが、原案・美
術・音楽も担当したCoccoの体当たりの演技だけでも、一見の価値はあります。
あの鬼気迫る表情はそう簡単に忘れられません。彼女にしかできない素晴らし
い歌のパフォーマンスもあります。
彼女なしでこの映画は成立しなかったでしょう。そういう意味で、これは塚本
監督の映画というよりも、Coccoの映画といえるかも。そのぐらい圧倒的な存在
感です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年4月11日（水）テアトル新宿にて。午後2時40分の回
[「こ」のページ] [「アルファベット」のページ] |
|