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苦役列車
（2012年 日本）（上映時間1時間54分）
監督：山下敦弘
出演：森山未來、高良健吾、前田敦子、マキタスポーツ、田口トモロヲ
＊丸の内ＴＯＥＩほかにて全国公開
ホームページ http://www.kueki.jp/
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＜ストーリー＞
1986年。日雇いの肉体労働でその日暮らしの生活を送る19歳の青年、北町貫多
（森山未來）。友達も彼女もおらず、唯一の趣味は読書。家賃を滞納し、稼い
だ金はお酒と風俗通いに費やす自堕落の日々だった。そんな中、職場で専門学
生の日下部正二（高良健吾）と知り合い意気投合。ようやく友達ができる。さ
らに、日下部に協力してもらい、秘かに想いを寄せる古本屋の女性、桜井康子
（前田敦子）とも友達になる貫多だったが……。
＜レビュー＞
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ダメダメ男の青春を山下敦弘監督が温かな視線で描く
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第144回芥川賞を受賞した西村賢太の同名小説を、『天然コケッコー』『マイ・
バック・ページ』などの山下敦弘監督が映画化した青春ドラマです。
山下監督といえば、『リアリズムの宿』『松ヶ根乱射事件』など、ダメダメ男
を描かせたら絶品の監督。今回はまさにうってつけの素材です。
それにしても今回の主人公のダメっぷりは壮絶です。時代は1986年（といって
も時代性はあまり感じさせませんが）。中卒で日雇い労働者の北町貫多は、自
堕落を絵に描いたような生活。家賃を滞納し、稼いだ金は酒と風俗につぎ込む
日々。友達も彼女もおらず、読書が唯一の趣味。自分を卑下する一方で、職場
の同僚を馬鹿にしまくる最低な性格。人間の卑しさを見せ付けられるような人
物です。
ところが、それが次第に魅力ある人物に見えてくるから不思議なもの。デタラ
メな日々の中で、彼の苦悩や人間らしさがチラリチラリと垣間見えてくるから
です。
職場で初めてできた友達との交友、古本屋でバイトする女性との楽しい時間、
その一方で父親が性犯罪者で一家離散した暗い過去を持つ苦しみ。そうした
様々なエピソードを通して、彼が根っからのダメ人間というよりも、生きるの
に不器用な人間だということがわかってきます。本人はただ自分の思いや本能
に忠実に生きているのに、それが周囲との軋轢を生み、どんどん彼自身を追い
込んでいきます。
ダメダメ人間を否定せず、温かな視線を向ける山下監督。その視線は過去の作
品と共通しています。
山下監督といえば、オフビートな笑いも持ち味ですが、今回はやや抑え目。前
半はそれほど笑えるところがありませんでした。しかし、後半に進むにつれて
ユーモラスなシーンが増加。特に修羅場で飛び出す笑いがユニーク。
やがて、せっかくできた友達や女友達との関係もうまくいかなくなる貫多。ラ
スト近くでのどん詰まりの行き場のない思いの表出が印象的。その後に描かれ
る３年後のエピローグのブッ飛んだ展開なども、山下監督らしさが炸裂してい
ます
ラストで必死に原稿用紙に向かう貫多の姿が、未来へのかすかな希望を感じさ
せて映画は終わります。
過去に山下監督がダメ人間を描いた映画に比べて、それほどアクは強くありま
せん。なので、その分感情移入しやすいドラマになっています。
主人公を演じる森山未來の演技も見事。ヘたをすればただの嫌なヤツにしか見
えない男を、豊かに肉付けし、確かな存在感を生み出しています。前田敦子が
意外に昭和が似合うのにもビックリ。あの頭突きは強烈！
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年7月15日（日）新宿バルト9にて。午後1時50分の回
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