ル・アーヴルの靴みがき(LE HAVRE)


(2011年 フィンランド・フランス・ドイツ)(上映時間1時間33分)
監督・製作・脚本:アキ・カウリスマキ
出演:アンドレ・ウィルム、カティ・オウティネン、ジャン=ピエール・ダル
ッサン、ブロンダン・ミゲル、ジャン=ピエール・レオ
*ユーロスペースほかにて公開
ホームページ http://www.lehavre-film.com/
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<ストーリー>
北フランスの港町ル・アーブルの駅前で靴磨きをして暮らすマルセル(アンド
レ・ウィルム)は、妻アルレッティ(カティ・オウティネン)と愛犬ライカと
ともに幸せに暮らしていた。だが、アルレッティは医師から余命宣告を受けて
しまう。それでも、彼女はその事実をマルセルに隠す。そんなある日、マルセ
ルはアフリカからの密航者で警察に追われる少年イドリッサと出会い、彼をか
くまうことになるのだが……。

<レビュー>
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密航少年を助ける人々。カウリスマキ流の善意にあふれた寓話
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『浮き雲』『過去のない男』『街のあかり』などで知られるフィンランドの名
匠アキ・カウリスマキ監督によるフランスの港町を舞台にした人情ドラマ。全
編フランス語の映画です。

北フランスの港町ル・アーブルの駅前で靴磨きをして暮らすマルセルという男
が、たまたま出会った不法移民の少年をかくまうことになり、ロンドンへの密
航を手助けするために奔走するというお話。そこにマルセルの愛妻の不治の病
というエピソードが絡んできます。

全体のタッチは過去のカウリスマキ作品と同じ。冒頭のギャングらしき男が射
殺されるシーンからカウリスマキ節が全開です。ちょっと乾いたタッチの映像、
極端に少ないセリフ、独特のユーモアが漂うあたりもいつも通り。音楽の使い
方も過去の作品と似ています。

ただし、決定的に違うのは徹底して善意にあふれたドラマであるところ。過去
の作品のようなシニカルさはあまり見られません。

主人公のマルセルをはじめ登場人物は善人ばかり。彼らの善意に基づく行動が
淡々と描かれます。例えばマルセルが少年をかくまっているのを知った商店主
たちが、いつも以上に彼にサービスするシーンなど、過剰ともいえる行動が微
笑ましい笑いを誘います。

本来なら、少年を捕まえなければならない警視さえ、さりげない善意を何度も
示します。

普通なら、こんなに都合の良いお気楽な展開はウソ臭くて仕方ないはず。とこ
ろが、カウリスマキらしい寓話的な世界のおかげで、素直に受け止められるか
ら面白いもの。

マルセルが少年の密航費用稼ぎのために、ロック歌手のカムバックライブを催
すのも楽しいエピソード。ここも善意がテンコ盛りです。

そして、ラストは「そんなのありか?」と思うような、あまりにも出来すぎな
大逆転のハッピーエンド。しかし、これさえも「ああ、よかった!」と素直に
受け止めて、幸せな気分になれるから不思議なものです。

マルセル役のアンドレ・ウィレムと、妻役のカティ・オウティネンの年輪を感
じさせる芳醇な演技が印象的。その他のキャストも魅力的です。

映画の途中では、フランス政府の移民に対する冷たい態度も描かれます。悪意
に満ちた最近の世の中に対して、カウリスマキ監督がさりげなく異議を唱えて
いる……というのは考えすぎでしょうか。

何にしても善意にあふれた物語。カウリスマキのファンならずとも、ハッピー
な気分になりたい人にはオススメです。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                           (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2012年4月28日(土)ユーロスペースにて。午後3時の回


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