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ライク・サムワン・イン・ラブ（LIKE SOMEONE IN LOVE）
（2012年 日本・フランス）（上映時間1時間49分）
監督：アッバス・キアロスタミ
出演：奥野匡、高梨臨、加瀬亮、でんでん、森レイ子、大堀こういち、辰巳智
秋、岸博之、春日井静奈、窪田かね子
＊ユーロスペースほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://likesomeoneinlove.jp/
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＜ストーリー＞
80歳を過ぎた元大学教授のタカシ（奥野匡）は、亡き妻に似た若い女性・明子
（高梨臨）をデートクラブを通して家に招く。明子は、田舎から出てきた祖母
を駅に置き去りにしてしまったことを気にしていた。タカシが用意した食事に
見向きもしない明子。翌朝、タカシは明子を大学まで車で送り、そこで明子の
婚約者ノリアキ（加瀬亮）と出会う。ノリアキはタカシを明子の祖父だと勘違
いするのだが……。
＜レビュー＞
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元大学教授とデート嬢とストーカー男。キアロスタミ監督の不思議な映画
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イランの巨匠アッバス・キアロスタミ監督が、日本を舞台に日本人キャストと
スタッフで撮った映画。イラン的でもなく、日本的でもなく、何ともいえない
独特の世界を持つ映画です。
元大学教授の老人が、亡き妻に似たデートクラブの女を自宅に呼び、翌朝、彼
女を大学まで送った際に、彼女の婚約者と称する男と出会う。そこで彼が老人
を女の祖父と勘違いしたことから、運命の歯車が狂いだし……。
というのがあらすじ。というか、これ以外にたいした出来事は起きません。イ
タリア・トスカーナを舞台にした前作『トスカーナの贋作』もそうでしたが、
これといった事件もなく、細々とした出来事を淡々と描きます。
前半は、元大学教授の老人とデート嬢の会話が中心。後半は彼女の恋人と老人
の会話が中心。デート嬢が、田舎から出てきた祖母を駅に置き去りにしてしま
ったことを気にしていたり、その婚約者がストーカー的な性質を垣間見せたり
と、登場人物の背景も多少は出てくるものの、それ以上深く追求することはあ
りません。
テーマも不明。都会の孤独、老人の寂しさと優しさ、うまくいかない恋愛、人
と人とのつながりなど、テーマになりそうな素材はあるものの、それらをきち
んと描こうとする意図は感じられません。
それでも最後まで飽きずに観られるのだから不思議なもの。これって何なんで
しょう？
もしかして、ある種のドキュメンタリーを見ているような感覚なのかもしれま
せん。3人の登場人物は、いずれも思い通りに事が運ばず、それがまた思わぬ事
態を招きます。大事件こそ起きないものの、次にどこに進むのか予測不能の人
生。それを除き見るスリルこそが、この映画の魅力かも。
そこはかとないユーモアがあったり、老人と若者のかみ合わない会話が面白か
ったり。さらに、映像のユニークさもこの映画の魅力でしょう。
大きなことは何も起きないといいましたが、最後にはビックリの出来事が用意
されています。突然の暴走は、人生の不確かさや不可解さを示したものなので
しょうか。まさか「最後ぐらい観客を驚かせてやれ！」と思ったわけでもない
でしょうし。うーむ、最後の最後まで不思議な映画です。
元大学教授タカシ役は84歳にして映画初主演の奥野匡、デート嬢・明子役は
「侍戦隊シンケンジャー」の高梨臨。ノリアキ役はおなじみの加瀬亮。
＜結論＞キアロスタミ監督でなければできない不思議な映画。メリハリのある
ドラマはありませんが、一瞬一瞬の積み重ねで、つい最後まで観てしまいまし
た。「こういう映画もあるんだ……」という発見をしたい方はどうぞ。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（81点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年9月17日（日）ユーロスペースにて。午後1時50分の回
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