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ＭＹ ＨＯＵＳＥ
（2012年 日本）（上映時間1時間93分）
監督：堤幸彦
出演：いとうたかお、石田えり、村田勘、佃典彦、佃明彦、多田木亮佑、板尾
創路、木村多江
＊新宿バルト9ほかにて公開
ホームページ http://myhouse-movie.com/
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＜ストーリー＞
公園に自分で建てた小屋で、パートナーのスミちゃん（石田えり）と暮らす鈴
本（いとうたかお）。空き缶拾いなどで、貧しいながらも自由なホームレス生
活を送っていた。一方、同じ町に住む優等生の中学生ショータは、潔癖症の母
（木村多江）に育てられ、ひたすらエリートコースを目指すように仕向けられ
ていた。そんな中、ある事件が起きて……。
＜レビュー＞
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堤幸彦監督による過去の作品とはまったく違う問題作
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『劇場版 ＴＲＩＣＫ』『２０世紀少年』『ＢＥＣＫ』『劇場版ＳＰＥＣ
天』など、エンタメ性あふれる映画を監督してきた堤幸彦監督が、過去の監督
作品とはまったく違うタイプの映画を生み出しました。社会派の素材といい、
抑制的な演出といい、とても同一人物の作品とは思えません。
描かれるのはあるホームレスとエリート一家。彼らを対比させて、今の日本社
会の不気味な側面をあぶり出しています。これまでのような過剰ともいえる演
出を排して、モノクロのドキュメンタリータッチの映像で抑制的に描写。セリ
フもほとんどありません。
公園に自力で小屋を建て、そこでパートナーの女性とともに暮らすホームレス
の鈴本。自分にノルマを課して、毎日きちんと空き缶拾いの仕事をしています。
自由な生活ながら、けっしてデタラメな生き方ではありません。
そんな彼を通して見えてくる今の日本。彼が拾うゴミは宝の山。工夫次第で、
なかなか豊かな生活ができます。元手をかけない家も、けっこう住み心地が良
かったりします。
そして、もう一方のエリート家族。母親は病的なまでの潔癖症で、ひたすら掃
除しまくります。そして息子の中学生ショータはエリートコースまっしぐら。
家族には会話らしい会話もありません。そんな生活の中で、母も息子も心に暗
い影がさしていきます。
この一家と鈴本のどちらが幸せなのか。本当の豊かさとは何なのか。堤監督か
ら観客に向かって、真摯な問いが投げかけられているようです。
後半になって、ショータの心の影が噴出します。衝撃的な事件によって、それ
まで接点のなかった彼と鈴本の人生が交錯します。
そこから見えてくるのは、現在の競争社会や格差社会がもたらすヒズミのよう
なもの。その行き着く先を想像すると背筋が寒くなります。
というわけで、社会的な問題を提起した堤監督の意欲作で見応えはなかなかの
もの。
ただし、残念なのは、鈴本やショータ、彼の母などのぶつかり合いがあまりな
いところ。事件後のショータの変化なども含めて、彼らの葛藤をもっと描いて
欲しかった気がします。エンタメ性を拒否するがゆえに、あえてドラマの起伏
を作らなかったのかもしれませんが、それにしても中途半端な印象が残ります。
役者では、主役の鈴本を演じたフォークシンガーのいとうたかお、そのパート
ナーを演じた石田えりの存在感に加え、ひたすら掃除しまくる木村多江の怪演
も印象に残りました。
できれば、堤監督にはこれ一作だけでなく、今後もこういうタイプの映画を監
督して欲しいものです。そうすれば、この作品を超える傑作が生まれるかも…
…。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年5月28日（月）新宿バルト９にて。午後1時の回
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