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ポエトリー アグネスの詩（POETRY）
（2010年 韓国）（上映時間2時間19分）
監督・脚本：イ・チャンドン
出演：ユン・ジョンヒ、イ・デヴィッド、キム・ヒラ、アン・ネサン、パク・
ミョンシン
＊銀座テアトルシネマほかにて公開
ホームページ http://poetry-shi.jp/
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＜ストーリー＞
66歳のミジャ（ユン・ジョンヒ）は、中学３年生の孫ジョンウクと２人暮らし。
介護ヘルパーとして働く彼女は、ある日、偶然目にした広告がきっかけで詩作
教室に通い始めるが、まもなく初期のアルツハイマーと診断される。そんな中、
ジョンウクと友人たちが、自殺した同級生の少女ヒジン（洗礼名アグネス）に
性的暴行をしていたことがわかる……。
＜レビュー＞
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苦しみながら詩作に向かう女性の魂の旅を繊細に描く
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『オアシス』『シークレット・サンシャイン』など深みのある人間ドラマで知
られる韓国の名匠イ・チャンドン監督の新作。
孫と２人で暮らす祖母ミジャが主人公。介護ヘルパーの彼女は、詩作教室に通
い始める。だが、まもなく初期のアルツハイマーであることが判明。そして、
孫が仲間とともに自殺した同級生の女の子に性的暴行を加えていたことが明ら
かになる……。
持ち前の繊細な感情表現にますます磨きがかかったイ監督。詩という新しい世
界に足を踏み入れた喜び、アルツハイマーを宣告された戸惑い、そして孫が起
こしたおぞましい出来事を知った悲しみ、嘆き、怒り。そうした主人公ミジャ
の内面を、感情をストレートに表現するのではなく、行動や表情の微妙な変化
によってあぶりだします。
元々きれい好きでおしゃれなミジャ。しかし、詩作教室の講師から、うわべで
なく真実を見つめることを説かれます。それでも、なかなか思うように詩がで
きません。しかも、孫の友達の親たちが被害者遺族と示談を成立させて、事件
をもみ消そうとします。ミジャもそこに加わることになるものの、示談金が用
意できず苦労します。
まさに詩作の困難さと、現実の人生の苦悩がリンクしていく展開。それでも、
次第に彼女は現実を見つめ、自分と孫の人生を問い直していきます。
中盤で登場する詩作教室の生徒たちの告白や、詩のサークルの朗読会なども、
ミジャに変化を促す効果的な仕掛けになっています。
映画のラスト。孫の事件が大きな展開を見せ、ミジャはついに完成した詩を通
じて死んだ少女ヒジンと同化していきます。この数分間は圧巻のシーン。哲学
的とも、人知を超えた世界ともいえる不思議な魅力にあふれています。ついに
ミジャがひとつの真実に到達した瞬間といえるでしょう。
テーマは重たいけれど、けっして重苦しい映画ではありません。イ監督が被写
体を見つめる視線には、常に温かさが感じられます。そして、少女の遺体が川
を流れてくるオープニングシーンからラストの川の流れまで、詩的としかいい
ようのない映像美も、重苦しさを感じさせない大きな原因でしょう。
ミジャを演じたユン・ジョンヒの抑制された演技も見事。韓国映画は、こうい
う年齢の女優さんも充実していますねぇ〜。
傷ついた初老の女性の魂の旅を繊細に描ききった映画。派手さはないし、テー
マも重たいけれど、深い余韻に浸れることは間違いありません。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年2月17日（金）銀座テアトルシネマにて。午後3時40分の回
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