RIVER


(2011年 日本)(上映時間1時間29分)
監督・原案・脚本:廣木隆一
出演:蓮佛美沙子、根岸季衣、田口トモロヲ、中村麻美、Quanka,with a Yawn、
尾高杏奈、 柄本時生、菜葉菜、小林ユウキチ、小林優斗
*ユーロスペースほかにて公開。順次全国公開
ホームページ http://river-movie.com/
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<ストーリー>
秋葉原で起きた無差別殺傷事件で恋人健治を失った、ひかり(蓮佛美沙子)は、
現実を受け入れられず、しばらく家に引きこもっていた。健治の面影を探して
彼が好きだった秋葉原を歩き始めた彼女は、女性カメラマンや路上ミュージシ
ャン、メイド喫茶のスカウトマンらと出会っていく。その中には、故郷を飛び
出してきた青年、佑二もいた。彼の故郷は東日本大震災の被災地だった……。

<レビュー>
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現実の事件をもとに描く愛する人を失った女性の再生のドラマ
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『ヴァイブレータ』『余命1ヶ月の花嫁』『軽蔑』の廣木隆一監督が、2008年6
月に起きた秋葉原無差別殺傷事件をモチーフに、大切な人を亡くした女性が喪
失感から再生していく姿を描いたドラマ。

主人公は事件で恋人を失った女性、ひかり。しばらく引きこもっていた彼女は、
秋葉原に来て面影を探す。そんな中で、女性カルメラマン、ストリートミュー
ジシャン、メイド喫茶のスカウトマン、メイド、地下道で暮らす青年など、
様々な人々と出会う……。

心を閉ざしていたヒロインが、様々な人々との出会いを通して、現実を受け入
れて前に踏み出すまでを淡々と描いています。大きな出来事は何も起きません
が、ヒロインの心情の変化がリアルに伝わってきて飽きることはありません。

廣木監督といえば、ドキュメンタリータッチの映像が大きな魅力。今回はそれ
が前面に出ています。冒頭、電車から降りて秋葉原の街を歩くひかりを、手持
ちカメラで10分以上も追い続ける映像で、一気にスクリーンに引き込まれます。
それ以外にも、ストリートミュージシャンとの対話シーンをはじめ、ドキュメ
ンタリータッチのシーンが満載です。

ヒロインを演じた蓮佛美沙子の自然な演技も印象的。特に街を歩く姿が絶品。
歩くだけで様々なことを物語っています。

スカウト役の田口トモロヲがあまりにもハマリ過ぎで面白かったのに加え、メ
イド役の菜葉菜の変身ぶりなども見事。

ただし、全体的にバランスの悪さを感じてしまうのが残念。特にドキュメンタ
リー的な部分と、そうでない部分との落差が気になりました。現実の事件があ
まりにも重たいせいでしょうか。ひかりの元同級生のAV女優の話などムダな
シーンもありました。

そして何より、違和感を感じたのが後半で登場する東日本大震災の被災地の映
像。ヒロインが出会った地下道に住む青年が帰郷して、目にした光景という設
定ですが、はたしてあれは必要だったのか。

製作中に起きたもう1つの惨劇を記録したいという廣木監督の意図はよく理解
できますが、あまりにも重たすぎる映像で、あそこだけが浮いている感じです。
このドラマのテーマであるヒロインひかりの再生のドラマが、完全に分断され
てしまいます。震災を描くなら、また別の映画でやるべきだったと思います。

とはいえ、ラストの船の中のひかりのシーンは圧巻。彼女の顔のアップを延々
と映し、その表情だけですべてを見せます。この素晴らしいラストシーンが冒
頭の彼女の姿とつながり、ドラマに余韻をもたらしてくれます。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2012年3月12日(月)ユーロスペースにて。午後12時30分の回


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