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ルート・アイリッシュ（ROUTE IRISH）
（2010年 イギリス・フランス・ベルギー・イタリア・スペイン）
（上映時間1時間49分）
監督：ケン・ローチ
出演：マーク・ウォーマック、アンドレア・ロウ、ジョン・ビショップ、トレ
ヴァー・ウィリアムズ、ジェフ・ベル、タリブ・ラスール、クレイグ・ランド
バーグ、ジャック・フォーチュン、ナイワ・ニムリ
＊銀座テアトルシネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.route-irish.jp/
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＜ストーリー＞
親友のフランキー（ジョン・ビショップ）を誘い、民間兵としてイラク戦争に
参加したファーガス（マーク・ウォーマック）。だが、彼が帰国後、イラクに
残ったフランキーは、世界一危険な道路として知られる"ルート・アイリッシュ
"で敵の襲撃に遭い死亡する。しかし、遺品の携帯電話に残された動画を見たフ
ァーガスは、フランキーの死に不審を抱く。フランキーの妻レイチェル（アン
ドレア・ロウ）の協力を得ながら、独自の調査を進めるファーガスだったが…
…。
＜レビュー＞
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緊迫の戦争サスペンスと社会批判を両立させる巨匠の技
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イギリスの名匠ケン・ローチ監督の作品。社会派の作品が多いローチ監督らし
く（前作の『エリックを探して』は珍しくも人情コメディでしたが）、本作も
イラク戦争を素材にした社会派作品です。ただし、ただの社会派ではなく戦争
サスペンスとしての魅力に満ちているのが、この映画の大きな特徴。
冒頭は切迫した電話の声。主人公ファーガスの親友でイラクにいるフランキー
の声です。しかし、トラブっていたファーガスは電話に出られません。
この電話の後、フランキーは死亡します。民間兵として彼を雇っていた会社は、
イラクで最も危険とされる"ルート・アイリッシュ"で敵の襲撃に遭い死亡した
と伝えます。しかし、その説明を疑問に思ったファーガスは、フランキーの死
の真相を追いかけます。
真相追求のカギとなるのがフランキーが遺した携帯電話。そこにはイラクでの
タクシー銃撃事件が録画されています。この時点で、フランキーの死とこの事
件に何らかのかかわりがあることがわかってしまいますが、その後も様々な謎
がバラまかれて、疑惑の渦が膨らんでいきます。戦争サスペンスとしての面白
さは一級品。
真相を追うファーガスが、冒頭で電話に出られなかったことに加え、フラン
キーをイラクに誘った張本人であるという設定も効果的。その自責の念が彼を
猛進させます。さらに、彼自身もかつてはイラクにいて、過酷な状況で大きな
トラウマを抱えてしまったことも、彼の行動に大きな影を落とします。
謎解きのサスペンスと同時に描かれるのは、イラクでの軍人や民間兵たちによ
る非道な行い。特に戦争をビジネスにする民間警備会社と、そこに雇われた民
間兵たちの所業をドキュメンタリータッチの映像なども交えながら、痛烈に告
発しています。
とはいえ、それが鼻につくような声高なメッセージではなく、あくまでもサス
ペンスの枠内に収めているのが見事なところ。
後半に進むにつれて緊迫感が高まり、やがて１人の男が疑惑の人となります。
そこでファーガスが取った行動が衝撃的。かつて彼らがイラクで行ったのと同
じ手法を実行。ところが……。
この構図によって、戦争の狂気がくっきりと浮かび上がります。直接的なメッ
セージよりも、はるかに強烈な戦争批判です。
そして、ついに本当の真相にたどり着いたファーガス。何ともやるせない船上
でのラストシーンです。
ハリウッド映画的な場面まで用意してエンタメ性を持たせながら、同時に社会
批判を両立させる名匠の技に感服です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年4月4日（水）銀座テアトルシネマにて。午後2時10分の回
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