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思秋期（TYRANNOSAUR）
（2010年 イギリス）（上映時間1時間38分）
監督：パディ・コンシダイン
出演：ピーター・ミュラン、オリヴィア・コールマン、エディ・マーサン
＊新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://tyrannosaur-shisyuuki.com/
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＜ストーリー＞
妻を亡くし失業中の中年男ジョセフ（ピーター・ミュラン）は衝動的な怒りを
抑えられず、酒を飲んでは大暴れする毎日を送っていた。そんなある日、ジョ
セフはひょんなことからチャリティ・ショップで働く女性ハンナ（オリヴィ
ア・コールマン）と出会う。明るく優しく信心深い彼女は、ジョセフに自然に
接し、ジョセフの心は少しずつほぐれていった。だが、そんなハンナには、人
には言えないある秘密があった……。
＜レビュー＞
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問題を抱えた男と秘密を持った女の交流を繊細に描く
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俳優のパディ・コンシダインの長編監督デビュー作。とてもデビュー作とは思
えない、繊細で深みのある人間ドラマです。
傷を抱えた男女の交流が物語の軸。男は、妻を亡くした失業中のジョセフ。酒
とギャンブルに明け暮れる彼だが最大の問題は怒りをコントロールできないこ
と。冒頭近くでは、なんと自分の愛犬を衝動的に蹴り殺してしまいます。
そんなジョセフは、ある時たまたまチャリティ・ショップで働くハンナという
女性と出会います。相変わらず悪態をつき、ハンナを困らせるジョセフですが、
それでもハンナは優しく接し、神の教えを説きます。
この２人のキャラクター設定が絶妙です。ジョセフは、けっして根っからの悪
人ではありません。自分の行動を嫌悪し反省するものの、また再び同じことを
してしまう弱い人間。一方、何も問題のないように見えるハンナですが、実は
暗い秘密を抱えています。
ぎこちないながら、少しずつ心を通わせていくジョセフとハンナ。その様子が
繊細かつ複線的に描かれていきます。アップを多用して、それぞれの心理状態
を丁寧に切り取る演出が印象的。ジョセフを演じる名優ピーター・ミュラン、
ハンナを演じるオリヴィア・コールマンの抑制的ながら、確かな存在感を示す
演技も心にしみます。
ネタ的に暴力的な展開があるものの、決定的にエグいところを自然にスルーす
るあたりの見せ方も巧みです。
やがてハンナの秘密が明らかになり、２人はさらに接近します。しかし、その
後、衝撃的な出来事が起きます。意表を突いた展開で、まったく想像していま
せんでした。
こうして暗転したかに見えたドラマですが、ラストにはかすかな希望の灯がと
もされます。２人の視線が多くのことを物語り、観終って穏やかな気持ちにな
れます。
結論としては……初監督作とは思えない見事な脚本・演出＆役者の演技で、実
に味のある人間ドラマに仕上がっています。どんなにどん底の人生でも、必ず
やり直せることが伝わってきました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
2012年10月28日（日）新宿武蔵野館にて。午後2時50分の回
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