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少年と自転車（LE GAMIN AU VELO）
（2011年 ベルギー・フランス・イタリア）（上映時間1時間27分）
監督・脚本：ジャン＝ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
出演：セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ、ファブ
リツィオ・ロンジョーネ、エゴン・ディ・マテオ、オリヴィエ・グルメ
＊Bunkamuraル・シネマほかにて全国公開
ホームページ http://www.bitters.co.jp/jitensha/
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＜ストーリー＞
自分を児童養護施設に預けたまま行方をくらませた父親を探す少年シリル（ト
マス・ドレ）。ある日、美容師のサマンサ（セシル・ドゥ・フランス）と出会
った彼は、週末だけの里親になってくれるように頼む。まもなく父親と再会し
たシリルだが、父親は彼を拒絶してしまう。そんなシリルを心配し、世話を焼
くサマンサだったが……。
＜レビュー＞
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父に拒絶された少年と週末だけの里親との絆
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『息子のまなざし』『ある子供』などの名匠ダルデンヌ兄弟によるヒューマン
ドラマ。第64回カンヌ国際映画祭でグランプリ（審査員特別賞）を受賞しまし
た。
父に施設に預けられた少年シリル。迎えに来ると言ったまま姿を消した父を探
す彼は、たまたま知り合った美容師の女性に週末だけの里親になってもらい、
父親探しを続ける。だが、まもなく再会した父親は彼を拒否する。それでも美
容師の献身的な愛で、立ち直ったと思われたシリルだが……。
いかにもダルデンヌ兄弟らしい作品です。ドキュメンタリータッチの映像、必
要最低限のセリフ、細かな説明もほとんどなく、観客に対して多くの余白を残
します。しかし、それが逆に多くのことを物語ります。
特に印象に残るのが、登場人物のしぐさや表情から、その内面を描写する巧み
さ。シリル少年のつらい思いや持って行き場のない怒り、彼の面倒を見る美容
師の胸に去来する様々な思いをリアルに切り取っていきます。
感情過多になりがちな物語ですが、けっして仰々しくなく、淡々とした描写を
貫徹。少年シリル役のトマス・ドレ、美容師役のセシル・ドゥ・フランス
（『シスタースマイル ドミニクの歌』『ヒア アフター』）の自然な演技も、
それを強く後押しします。
美容師のもとで立ち直るかに思えたシリルですが、まもなくワルい仲間に目を
つけられて思わぬことを起こします。そのあたりの彼の心情が当初はイマイチ
理解できないものの、やがてその真意が明らかになります。
一方、美容師は徹底してシリル少年に愛情を注ぎます。そこには何があるのか。
それについても、明確な説明はありません。彼女の表情やしぐさをヒントに、
観客に判断を委ねています。まるで、「もしもあなたならどうする？」と問い
かけているかのようです。
ラストでは思わぬ出来事が起きて観客を驚かせます。かなり衝撃的な出来事で、
子供の残酷さや復讐の恐ろしさを見せつけられますが、最後にはシリルの新た
な姿を見せて希望の火を灯してくれます。
ダルデンヌ兄弟らしい文句なしの秀作。ただし、少年が父親を強く求める背景
は、もう少し明確にしてもよかったかも。ウニー・ルコント監督の『冬の小
鳥』のように、冒頭でかつての父子の楽しかったシーンを見せるとか……。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年4月10日（火）Bunkamuraル・シネマにて。午後12時45分の回
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