少年は残酷な弓を射る(WE NEED TO TALK ABOUT KEVIN)


(2011年 イギリス)(上映時間1時間52分)
監督:リン・ラムジー
出演:ティルダ・スウィントン、ジョン・C・ライリー、エズラ・ミラー、ジ
ャスパー・ニューウェル、ロック・ドゥアー、アシュリー・ガーラシモヴィッ
チ、シオバン・ファロン・ホーガン、アースラ・パーカー
*TOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
ホームページ http://shonen-yumi.com/
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<ストーリー>
自由に世界を旅してきた作家のエヴァ(ティルダ・スウィントン)は、キャリ
アの半ばで妊娠。やがて誕生した息子ケヴィンは、なぜか自分にだけ懐こうと
しなかった。成長するにつれ、反抗的な態度がエスカレートかるケヴィン。エ
ヴァは我が子に恐怖さえ抱くようになる。夫に相談しても取り合ってもらえず、
不安が募るエヴァ。そして、やがて衝撃的な事件が起きる……。

<レビュー>
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微妙な母子関係を背景にした戦慄のサスペンス
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「戦慄のサスペンス」というキャッチフレーズはよく耳にするけれど、最近観
た映画の中で最もピッタリきたのがこの映画。その怖さときたら、もはやホ
ラー映画の域に達しています。

オープニングの白いカーテン、それに続く鮮血のような赤に染まった人々の映
像が強烈。赤はこの映画全体を支配するカラーです。ビビッドで隅々までこだ
わった映像世界は、まるで絵画のようです。

そして始まる主人公エヴァの物語。有能な作家だったはずの彼女が、なぜかあ
りふれた事務仕事に就きます。しかも、その面接帰りには、通りすがりの女に
罵声を浴びせられ、殴られます。いったい何がなにやら、さっぱりわからない
ままドラマがスタート。

その後、どうやら彼女には暗い過去があるらしいことが判明。そんな過去と現
在が入り乱れ、エヴァと夫、長男、長女との暮らし、刑務所での面会シーン、
裁判所から出てくるエヴァなど、様々な要素がちりばめられていきます。ナゾ
はますます深まって、なかなか真相が見えてきません。

そんな中で、クローズアップされるエヴァと息子との関係。幼い頃から父親に
は従順なのに、エヴァに対しては反抗的な長男のケヴィン。その態度は、ある
意味、悪魔的ともいえるほどで、エヴァを混乱と憔悴に追い込んでいきます。

成長するにつれて、その態度は収まるどころかエスカレートし、陰湿化してい
きます。そして、起きる衝撃的な出来事。ケヴィンの幼少時の「ロビン・フッ
ド」のエピソードが、さらに怖さを煽ります。

ドラマの進行につれて、少しずつ何が起きたかが明らかになっていき、衝撃の
クライマックスですべてがつながるところが圧巻。

ラストには、微かながらも未来につながるようなセリフが用意されています。
ただし、事件の顛末があまりにも衝撃的過ぎて、素直に心に響いてこないのが
やや残念。

エヴァ役のティルダ・スウィントンの追い詰められて行く演技がリアルすぎま
す。彼女を追い詰める長男ケヴィン役のエズラ・ミラーの感情の見えない表情
も怖すぎ。エヴァの夫役を超イケメンでなく、ジョン・C・ライリーにしたの
も効いています。

ひたすら怖ろしくて、スクリーンから目が離せませんでした。その恐ろしさの
源泉にあるのは、母子の微妙な関係。子供のいない私が言うのもなんですが、
子供は天使であると同時に悪魔でもあるのでは? 自分の分身のような密接な
関係でありながら、あくまでも別人格であり、言うことを聞かないこともたび
たび。そんな母子関係が根底にあるからこそ、恐怖が倍化します。

後味のよい映画ではないけれど、いつまでも心に残りそうです。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                           (田中ひろあき(ぽち))

2012年7月10日(月)TOHOシネマズ シャンテにて。午後2時30分の回


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