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その夜の侍
（2012年 日本）（上映時間1時間59分）
監督・脚本：赤堀雅秋
出演；堺雅人、山田孝之、綾野剛、高橋努、山田キヌヲ、坂井真紀、谷村美月、
安藤サクラ、田口トモロヲ、新井浩文、でんでん、木南晴夏、峯村リエ、黒田
大輔、小林勝也、三谷昇
＊有楽町スバル座ほかにて公開
ホームページ http://sonoyorunosamurai.com/
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＜ストーリー＞
５年前にひき逃げで妻を失った町工場の経営者・中村健一（堺雅人）は、心の
傷が癒えないまま、妻との思い出にとらわれていた。一方、刑期を終えて出所
したひき逃げ犯の木島宏（山田孝之）は、まったく反省することなく、傍若無
人な振る舞いを見せていた。そんな木島のもとに、"復讐決行日"までをカウン
トダウンする脅迫状が届く……。
＜レビュー＞
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復讐劇の形を借りて描く人間の奥底にあるもの
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赤堀雅秋が自らの劇団「ＴＨＥ ＳＨＡＭＰＯＯ ＨＡＴ」の同名舞台を映画
化した初監督作品。
……と事前に聞いていたので舞台劇っぽい映画を想像したらとんでもない。セ
リフはそれほど多くなく、手持ちカメラやアップを多用するなど、映像の力で
登場人物の心理を描き出していきます。従来の舞台劇の映画化作品とはかなり
異質。
物語の骨格は復讐劇です。妻をひき逃げで殺された主人公が、反省もなくやり
たい放題に生きる犯人に対して、復讐を企てます。
ただし、復讐劇はあくまでも人間の本性を引き出すための仕掛け。登場人物た
ちの様々な心理や行動を描くことで、人間の奥底をグリグリとえぐり出してい
ます。亡き妻の思い出にとらわれて、孤独と絶望に生きる主人公の中村（留守
電の録音やプリンなどを使って描写）。そんな彼に立ち直ってもらうべく結婚
相手を紹介する義兄。中村の工場の従業員たち。ひき逃げ犯に振り回される周
囲の人々などなど。
ここに登場するのは欠陥だらけの人間ばかり。被写体との絶妙の距離感で、彼
らの孤独や絶望、そして葛藤を見せていきます。感情を押し殺したように生き
る中村の積りに積もった激情、妹（中村の亡き妻）のことを忘れたようにふる
まう義兄のけっして消せない傷、そうした描写が見事です。
クライマックスは豪雨の中の中村と木島の対決。壮絶な肉体のぶつかり合いが、
観客を圧倒します。息をのむ迫力のシーン。
そして、中村のその後を描いたラスト。一つの峠を越えた中村の心理を力強く
表現します。
中盤以降、ややリアルさを欠いたセリフが目立ったり、ひき逃げ犯の木島の描
き方が画一的なところが惜しいところ。
それでも、人間の奥底をえぐり出した圧巻の作品です。復讐劇の形を借りて、
人間の不可解さ、恐ろしさ、そしてわずかな希望を表現しています。最初から
最後までまったく目が離せませんでした。間違いなく、今年の日本映画ベスト
５に入る作品だと思います。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年11月18日（日）ユナイテッド・シネマとしまえんにて。午後2時の回
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