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たとえば檸檬
（2012年 日本）（上映時間2時間18分）
監督：片嶋一貴
出演：韓英恵、有森也実、綾野剛、佐藤寛子、白石隼也、町田啓太、信太昌之、
渡邉紘平、松本若菜、内田春菊、古田新太、室井滋、伊原剛志
＊シネマート六本木にて公開
ホームページ http://dogsugar.co.jp/lemon.html
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＜ストーリー＞
アクセサリーデザイナーを目指す20歳のカオリ（韓英恵）は、母親の家庭内暴
力と過干渉に苦しんでいた。ある日、上昇志向を持つ不良の石山（綾野剛）と
出会い、母の支配から抜け出そうと決意する。一方、大手企業の役員秘書をす
る40歳の香織（有森也実）は、万引きの常習犯でセックス依存症。家には引き
こもりの娘がいた。河内（伊原剛志）という刑事と出会い、精神科で診察を受
ける香織だが……。
＜レビュー＞
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２人の「かおり」の母との愛憎。心の奥底が伝わる映画
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2009年の『アジアの純真』が評判になった片嶋一貴監督の新作。母との間に複
雑な愛憎関係を抱える２人の「かおり」という女性の壮絶な物語です。
20歳のカオリは、母からのＤＶと過干渉に悩み、専門学校の学費が払えず退学
寸前。そんな中、成り上がり志向の強い不良の石山と出会い、母の支配から脱
出しようとする。
40歳の役員秘書の香織は、家に引きこもりの娘がいて、そのストレスからか万
引きや様々な男とのセックスにのめりこむ。そんな中、刑事の石山から勧めら
れて精神科に行き、「境界性パーソナリティ障害」といわれる。
かなり粗っぽいところのある映画です。生硬なセリフが目立つし、イメージだ
けで撮ったシーンなどもあります。
それでも、それをはるかに凌駕する見応えがあります。何より２人の「かお
り」の心の奥底がリアルに伝わってきます。愛を渇望しながら、それが得られ
ない苦しみや絶望で、見ているこちらまで押しつぶされそうです。
特にすばらしいのが、２人の「かおり」を演じる韓英恵と有森也実。鈴木清順
監督の『ピストルオペラ』で初めて見た韓。当時はまだ子供でしたが、すっか
り女優らしく成長していました。一方、ベテランの有森は鬼気迫る演技。彼女
の代表作になりそうです。２人にこれだけの演技をさせただけでも、片嶋監督
の手腕はかなりのもの。室井滋、伊原剛志、内田春菊などの脇役も存在感を発
揮しています。
交互に描かれる２人の「かおり」の接点は、途中まではほとんどありません。
ところが、後半になって思わぬ展開が待っているのです。なるほどねぇ。カオ
リのドラマの時代設定が、少し古っぽいと思っていたら、そういうことだった
のか……。
ラストはお気楽な結末を拒否しつつも、けっして絶望のどん底のままでは終わ
りません。
後半もやや駆け足だったりして、全体にもう少し練り上げて欲しかったところ
はあるものの、中身の濃い映画で2時間18分があっという間でした。かなり重た
い映画ですが、役者たちの演技だけでも観る価値はあります。
愛情と憎悪は表裏一体。ほんのちょっとしたことで、それがコインの裏側のよ
うに引っくり返ってしまう。そんな人間の本性を垣間見た映画なのでした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2012年12月28日（金）シネマート六本木にて。午後12時30分の回
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