終の信託


(2012年 日本)(上映時間2時間24分)
監督・脚本:周防正行
出演:草刈民代、役所広司、浅野忠信、細田よしひこ、中村久美、大沢たかお
*TOHOシネマズ日劇ほかにて全国公開
ホームページ http://www.tsuino-shintaku.jp/
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<ストーリー>
1997年、天音中央病院・呼吸器内科の医師・折井綾乃(草刈民代)は、不倫関
係にあった同僚医師の高井(浅野忠信)に捨てられ、自殺未遂騒動を起こす。
傷心の折井だが、重度の喘息で入退院を繰り返す患者・江木秦三(役所広司)
の優しさに救われ、2人は強い絆で結ばれていく。やがて折井は、自らの死期を
覚悟した江木から「もしもの時は早く楽にして欲しい」と言われるのだが……。

<レビュー>
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終末医療をテーマにした問題作。検事と女医の息詰まる攻防が見もの
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『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』の周防正行監督の作品。
珍しくオリジナルではなく、原作モノ(朔立木の小説)です。

終末医療が大きなテーマ。不倫が原因で自殺未遂騒動を起こし、患者の優しさ
のおかげで立ち直った女医。その患者から「もしもの時は楽にして」と頼まれ、
それを実行に移す時が来る……。

周防監督の映画は、けっこうエンタメ性が高いのが特徴。冤罪をテーマにした
前作『それでもボクはやってない』でも、笑いをまぶしつつ面白く描いていま
した。しかし、今回はテーマがテーマだけにかなりシリアス。

冒頭近くで、主人公の女医の折井が検察に出頭するシーンが描かれ、彼女の行
為が問題になっていることが明らかになります。

そこからは回想シーン。折井と同僚医師との不倫と、その挙句の自殺未遂騒動
が描かれます。主人公を演じる草刈民代と不倫相手の浅野忠信の濡れ場も登場。
これは、この映画で数少ないファンサービスなのか?

しかし、この前半が説明過多のセリフやムダなシーンが多くて、ちょっとダル
い感じ。もう少し、コンパクトにしてもよかったのでは?

その後、車の中で、折井が喘息患者の江木から「もしもの時は〜」と頼まれる
あたりから、がぜん緊迫感が出て面白くなります。とうとう江木が心肺停止に。
いったん蘇生して人工呼吸器につながれるものの、まもなく周囲にとって決断
の時がきます。

細部までこだわる周防監督の演出、患者役の役所広司の鬼気迫る演技もあって、
このあたりはかなりリアル。息をのむほど壮絶な場面です。

そして、この映画の最大の見せ場は、その後に描かれる検事と折井の対決。巧
妙に折井を追い詰めていく検事。必死で抵抗する折井。40分以上にもわたる圧
巻のシーンです。検事を演じる大沢たかおのコワい演技も見ものですが、草刈
民代の役者としての成長ぶりがよくわかります。

ここに至って、それまでの終末医療や人間の生死というテーマに加え、司法制
度というテーマも観客に投げかけられます。

その後のラストはやや拍子抜け。でもまあ、サスペンス映画じゃないし、中途
半端な法廷劇を展開して尻切れトンボに終わるよりは、こういう決着のほうが
よかったのかな。

結論としては……重たいテーマでスカッとするような映画ではありませんが、
検事と女医の息づまる対決シーンだけでも見る価値はあります。前半がややダ
ルいのが惜しいところ。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(87点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2012年10月27日(土)シネマサンシャイン池袋にて。午後2時の回


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