|
やがて哀しき復讐者（報應／PUNISHED）
（2011年 中国・香港）（上映時間1時間37分）
監督：ロー・ウィンチョン
出演：アンソニー・ウォン、リッチー・レン、ジャニス・マン、マギー・チョ
ン、キャンディ・ロー、ラム・レイ、チャーリー・ツァオ、エレナ・コン
＊新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://www.3hknoirfes.net/ （ニュー香港ノワール・フェ
ス）
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
不動産会社社長のウォン（アンソニー・ウォン）の娘が誘拐され、その後、遺
体で発見される。犯人から身代金要求があった際に、ウォンは娘の狂言誘拐で
はないかと疑い、警察に通報しなかった。その結果、身代金を奪われ、娘も殺
されたウォンは、犯人への復讐を誓い、信頼する部下で元ヤクザのイウ（リッ
チー・レン）に犯人探しを命じるのだが……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
アンソニー・ウォン主演。娘を殺された父親による復讐のドラマ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
香港ノワールの巨匠ジョニー・トー監督が製作を手がけたサスペンス・アクシ
ョン。
冒頭に登場するのはボリビアの「天空の鏡」といわれる美しい場所。そこにい
るのは不動産会社社長のウォン。続いて彼の娘が遺体で発見されるショッキン
グなシーンが。
実は、この娘の誘拐事件が物語の大きな柱。いったい誰が彼女を誘拐したのか、
その犯人探しが重要なポイントになります。それなのに、彼女が死んでしまっ
ていることを最初にバラしていいのか？ 生きているか死んでいるかわからな
いほうが、ハラハラの展開になるのでは？
と思ったのですが、作り手の意図は違うところにありました。タイトルにもあ
るように、このドラマは娘を殺された父による復讐劇。そこに父の娘に対する
様々な感情が映し出されていきます。
ウォンの娘デイジーは、実母が死んでウォンが後妻を迎えたこともあり、かな
り反抗的。不良とつるみ、ドラッグ漬けの日々を送っています。そのため、ウ
ォンは誘拐事件が発生した当初、彼女による自作自演ではないかと疑います。
そうした経緯があるだけに、娘を失ったウォンの胸には後悔や怒りの念が募っ
ていきます。そして、復讐を決意したウォンは、信頼する部下で元ヤクザのイ
ウに犯人探しと復讐を依頼します。
このイウも、離婚して息子とうまくコミュニケートできない悩みを抱えている
のがミソ。昔のヤクザ仲間などを頼りつつ、犯人に迫り、冷徹に復讐を果たし
ていきます。
犯人探しのドラマとしてはそれほど凝ったところはありませんが、１人、また
１人と芋づる式に敵を追い詰め、罰を下す展開は迫力十分。香港映画らしく、
銃撃戦などのアクションも適度に盛り込まれています。
とはいえ、中心はやはり父親の娘に対する思い。それがより明確になるのがラ
ストの展開。いったんすべての復讐を終えたと思わせた後で、もう１人の意外
な犯人が出現（ややバレ気味だけど）。そこでもう１組の親子の絆を見せて、
切なさを漂わせます。
サスペンス＆復讐のドラマとして、突出したところはないものの、手堅くまと
めた作品です。何よりもウォン役の名優アンソニー・ウォンの貫禄の演技が見
事。その表情だけで、雄弁に様々なことを物語っています。犯人を追うリッ
チー・レンの仕事人ぶりも見もの。
欲を言えば、ウォンが関わる開発プロジェクトをめぐるエピソードを、もう少
し効果的に事件と結び付けて欲しかったですね。犯人探しの面白さももっと追
求して欲しかったな。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年7月23日（月）マスコミ試写にて（シネマート六本木）
[「や」のページ] |
|