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夢売るふたり
（2012年 日本）（上映時間 2時間37分）
原案・監督・脚本：西川美和
出演：松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木
村多江、やべきょうすけ、大堀こういち、倉科カナ、伊勢谷友介、古舘寛治、
小林勝也、香川照之、笑福亭鶴瓶
＊ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほかにて公開
ホームページ http://yumeuru.asmik-ace.co.jp/
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＜ストーリー＞
小料理屋を営む貫也（阿部サダヲ）と妻の里子（松たか子）。だが、調理中の
失火で店は全焼。里子はもう一度店を持とうと前向きになるが、貫也は立ち直
れない。そんなある日、店の常連客だった玲子（鈴木砂羽）と再会した貫也は、
酔った勢いで一夜をともにする。玲子に同情され、大金を手渡される貫也。そ
れを知った里子は、夫を使って結婚詐欺をすることを思いつく。夫婦は共謀し
て詐欺を働くのだが……。
＜レビュー＞
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複雑で曖昧な心理を巧みに描き出す西川監督のスゴミ
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『ゆれる』『ディア・ドクター』の西川美和監督の新作。今回もオリジナル脚
本です。
小料理屋を営む夫婦が主人公。失火により店を全焼させた2人は、ひょんなこと
がきっかけで、再建資金を稼ぐために妻の里子の差配により、夫の貫也が結婚
詐欺をするようになる……。
というお話自体は、それほど面白いとは思いません。しかし、それだからこそ、
そこから登場人物たちの人生がリアルに見えてきます。
冒頭に登場するのは、主人公夫婦に加え、後に詐欺の被害者となる女性たち。
そうです。彼女たちもまた、この物語の主人公なのです。
主人公夫婦の餌食になるのは、いずれも心に空洞を抱えた女たち。それぞれの
描き方に濃淡はあるものの、彼女たちの寂しさ、悲しさ、つらさなどがリアル
に伝わってきます。
セリフ（印象的なセリフがあちこちに）＋行動＆微妙な表情のコンビネーショ
ンで、登場人物の心理をグリグリとえぐり出すワザは今回も絶品。共感するの
でも突き放すのでもない、絶妙な距離感が見事です。
もちろん主人公夫婦の心理も赤裸々にさらけ出されます。最初はひとつの目的
に向かって突き進んでいたものの、やがて2人の間にすきま風が……。
実行犯である夫と指示役である妻。罪悪感や嫉妬心など、一筋縄ではいかない
複雑で曖昧で屈折した感情がスクリーンを覆います。それはまるで人生そのも
のを表現しているようです。
それにしても、毎回、これだけの心理描写ができるのだから立派なもの。西川
監督は、ふだんからよほど容赦なく人間を観察しているのでしょう。こういう
人とは、はっきり言って、つきあいたくないです。コワくて（笑）。
とはいえ、重たかったり、息苦しい映画ではありません。結婚詐欺の経緯をコ
ミカルに見せたりして、笑いも含めたエンターティメントとして楽しめるよう
に作られています。
夫婦役の松たか子、阿部サダヲに加え、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原
由夏などの被害者女性たちも素晴らしい演技です。
やがて夫婦の間に微妙な感情のずれが生じ、夫がある女性と出会ったことから、
大きな転機が訪れます。
惜しむらくはそれ以降の展開が、今ひとつ納得できないこと。2人の関係にキッ
チリとした落とし前をつけたかったのでしょうか。結末に向かって起きる唐突
な事件。そのうえでラストは観客に委ねる意味深な終わり方。うーん、なんか
違う気がするんだよなぁ。
＜結論＞それでもやはり、西川監督の実力を再確認するには十分な映画です。
いろんな意味でスゴミが感じられます。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（91点）
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2012年9月13日（木）シネ・リーブル池袋にて。午後12時20分の回
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