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悪人に平穏なし（NO HABRA PAZ PARA LOS MALVADOS）
（2011年 スペイン）（上映時間1時間54分）
監督・脚本：エンリケ・ウルビス
出演：ホセ・コロナド、ロドルフォ・サンチョ、エレナ・ミケル、フアンホ・
アルテロ、ペドロ・マリア・サンチェス、ナディア・カサード
＊ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開
ホームページ http://www.akuninheion.jp/
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＜ストーリー＞
ある事件をきっかけに、落ちぶれてしまった中年刑事のサントス（ホセ・コロ
ナド）。ある日、マドリード市内の酒場で揉め事を起こし、酔った勢いで店内
にいた３人を射殺してしまう。とっさに証拠隠滅を図るサントスだったが、現
場から逃げ出した目撃者の存在に気づき、その足取りを追い始める。その結果、
大規模な麻薬取引のネットワークに遭遇するサントス。一方、酒場での殺人事
件を追う警察の捜査陣は、サントスに疑惑の目を向け始めるが……。
＜レビュー＞
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悪徳刑事によるテロ集団追跡劇をハードボイルドタッチで
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目撃者を探すうちに麻薬ネットワークに行きつき、さらにテロリスト集団に迫
っていく刑事。ただし、その刑事が悪徳警官で、探しているのが自分の殺人の
目撃者というのがユニーク。ハリウッド映画のような単純な正義ＶＳ悪の戦い
ではありません。
冒頭に登場するのが泥酔した刑事サントス。見るからにクセモノです。まもな
く飛び込んだバーで店員らと揉め、衝動的に３人を射殺してしまいます。その
現場から目撃者が逃げ出したことを知った彼は、その足取りを追います。一方、
女性判事を中心とした捜査陣は、サントスが起こした殺人事件の捜査を続けま
す。
やがてサントスはコロンビア人の麻薬ネットワークに行きつき、それがテロ集
団の恐ろしい計画につながっていきます。それに対して捜査陣も最初は麻薬ネ
ットワークに着目しますが、次第にサントスに疑惑の目を向けるようになりま
す。
ドラマは、サントスによる目撃者探しと、捜査陣による殺人事件の捜査を並行
して描きます。必要最低限のセリフ。状況の細かい説明も一切なし。ハードボ
イルドタッチの緊迫感に満ちたドラマが展開します。かつては花形警官だった
ものの、ある事件から落ちぶれたというサントスの過去も物語に陰影を加えて
います。暗く重苦しいタッチの映像も印象的。
この映画は、2004年にスペイン・マドリードで起きた同時多発テロをモチーフ
に、その捜査資料から生み出された作品。それだけにリアルさも十分です。連
携ミスなど、テロを防止できなかった捜査当局の欠陥も示されます。
クライマックスはサントスとテロ集団との対決。とはいえ、サントスが悪徳警
官ゆえ、スカッとする決着ではありません。その代わり、彼がどんな心理状態
でそこに至ったのか、刑事の本能か、贖罪の気持ちか、それとも……などと、
様々なことを考えさせられる余韻の残るエンディングです。
主演のホセ・コロナドの壮絶な演技に加え、女性判事役のエレナ・ミケルの抑
制的な演技も印象的。
この映画は、スペインのアカデミー賞といわれる"ゴヤ賞"で、2012年の作品・
監督・主演男優を含む最多６部門を受賞したそうです。それに恥じない脚本・
映像・演技ともに一級品の犯罪映画です。最初から最後までゆるむところなし。
見事です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年2月13日（水）ヒューマントラストシネマ渋谷にて。午後2時30分の回
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