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ばしゃ馬さんとビッグマウス
（2013年 日本）（上映時間1時間59分）
監督：吉田恵輔
出演：麻生久美子、安田章大、岡田義徳、山田真歩、清水優、秋野暢子、松金
よね子、井上順
＊丸の内TOEIほかにて公開
ホームページ http://www.bashauma-movie.jp/
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＜ストーリー＞
脚本家を夢見て、ばしゃ馬のように頑張る34歳の馬淵みち代（麻生久美子）。
コンクールに応募するが落選続き。コネを求めて友人を誘ってシナリオ教室に
入ると、そこには天童義美（安田章大）がいた。ビッグマウスの自称天才の天
童だが、実は脚本を書いたことがない。「偉そうなことは書いてから言え」と
みち代に一喝される天童。一方、みち代は取材のつもりで、元彼が勤める介護
施設でボランティアをするのだが……。
＜レビュー＞
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脚本家の夢を追って奮闘する女性の葛藤をリアルに
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夢を持つことは素晴らしいこと。だけど同時に厄介なことでもあります。そん
なことをつくづく感じさせられる映画です。
タイトル通りに、脚本家を目指して、ばしゃ馬のように頑張る女性が主人公。
なかなか芽が出ず、シナリオ教室に通ってみたら、そこにはビッグマウスの年
下男がいて、最初は反発し合うのだが……。
とくれば、これはもう普通なら年の差カップルの恋愛模様。しかし、このドラ
マはそうなりません。２人がお互いに心を通わせることはあるものの、恋愛に
までは発展しません。
いえいえ、それだけではありません。事件らしい事件はほとんど起きません。
せいぜい主人公のみち代が、ボランティア先の介護施設でトラブルを起こすぐ
らいです。
しかし、それでも圧倒的に面白いドラマが展開します。何しろ、登場人物の心
情があまりにもリアルに伝わってくるんです。特に主人公みち代の心理描写が
見事。夢をかなえようと必死で頑張るもののうまくいかない。それでもあきら
められない。そんな葛藤が痛いほど伝わって来て、ひたすら共感するしかあり
ませんでした。
吉田恵輔監督の演出も良いのですが、やっぱり麻生久美子の演技が絶品ですね。
心の痛みがリアルに伝わってくる演技に脱帽。彼女の代表作の一つになりそう
です。
といっても、シリアスなだけのドラマではありません。むしろ全体はコメディ
タッチ。ビッグマウスの青年・天童の関西弁の軽妙な口調を生かしたり、ディ
テールで笑わせたり。前々作の『純喫茶磯辺』でもオフビートな笑いを振りま
いた吉田監督らしいタッチです。
夢を持ちながら、どこかで踏ん切りをつけなければと思うみち代。そのみち代
に一喝されて一念発起する天童。夢を追いかける２人の行く末は？
みち代が最後と決めたコンクール応募までを、テンポよく映像でつないで描き、
その後の後日談でジンワリ感動させるあたりも印象的。みち代が過去の自分の
作品を見るシーンでは、こちらまで切なくてウルウルしてしまいました。
まあ、これだけ私が共感するのは、私自身が脚本に関わっているせいもあるわ
けですが。冒頭のコンクール応募＆落選シーンから、自分が経験したことのオ
ンパレード。「ああいうことあるよなぁ」「ああいう人いるよなぁ」と何度も
うなづいてしまいました。
でも、脚本家に限らず、夢を持つ人、あるいはかつて持っていた人にとっては、
かなり共感できるはず。私的には、今年の日本映画の上位に食い込む作品だと
思いました。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆（＋1／2★）
（95点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★★☆
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年11月3日（日）新宿バルト９にて。午後1時の回
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