ハッシュパピー バスタブ島の少女
(BEASTS OF THE SOUTHERN WILD)


(2012年 アメリカ)(上映時間1時間33分)
監督:ベン・ザイトリン
出演:クヮヴェンジャネ・ウォレス、ドワイト・ヘンリー
*ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開
ホームページ http://www.bathtub-movie.com/
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<ストーリー>
長々と伸びる堤防によって、世間から取り残されたような湿地帯のコミュニテ
ィー、通称バスタブ島。6歳の少女ハッシュパピー(クヮヴェンジャネ・ウォ
レス)は、父親と島の仲間たちとともに原始的な生活を送っていた。そんなあ
る日、大嵐が襲来して島は壊滅状態となってしまう。父親が重病を患っている
ことを知ったハッシュパピーは、母親がいると信じている場所に向かうのだが
……。

<レビュー>
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現実をベースにしたファンタジー。少女のたくましさに胸を打たれる
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1982年生まれの新人監督が低予算で取ったインディーズ作品ながら、サンダン
ス映画祭、カンヌ国際映画祭で注目を集め、アカデミー賞では作品賞、主演女
優賞など4部門にノミネートされた映画です。

地球温暖化や貧困、物質文明など現実社会をベースにしつつも、ファンタジー
的なドラマを通して、1人の幼い少女の成長を描いています。

舞台となるのは、堤防によって文明社会から隔絶された湿地帯。そこにはバス
タブ島と呼ばれるコミュニティーがあり、人々は原始的な生活を送っています。
主人公の少女ハッシュパピーも、父親とともにそこで暮らしています。

この映画の特徴は映像の見事さ。動物の生態、自然の猛威、ハッシュパピーた
ちの暮らしぶりなどを鮮烈な映像で描きます。

その中で、主人公のハッシュパピーの独白というスタイルでドラマが進行しま
す。ファンタジーとはいっても、ウソくささはありません。人物描写は複眼的。
バスタブ島の人々は、厳しい自然を相手にサバイバル生活を展開する一方で、
お気楽にお祭り騒ぎをして飲んだくれて……。父親のハッシュパピーに対する
態度も、愛情を感じさせる一方で、冷酷な態度を見せたり……。

そんな人たちに囲まれたハッシュパピーは、時には弱音を吐いたり、怒りを抑
えきれなくなるものの、毅然とした態度で自分の人生を切り開こうとします。
動物の心臓の音を聴いたり、不在の母親に話しかけたりする彼女の行動が、そ
の豊かな感受性を浮き彫りにします。

ドラマの後半。大嵐によって島は崩壊。人々は強制退去となって収容所に送ら
れます。さらに父親が重病だと知ったハッシュパピーは、母親がいると信じる
場所に向かいます。

次々と襲いかかる試練に立ち向かい、ハッシュパピーはたくましくなっていき
ます。クライマックスに登場するのは、彼女の空想の産物らしき存在。それを
コントロールすることで、彼女の自立への第一歩を表現します。その前に登場
する不思議な船や酒場などの使い方も印象的。

現実とファンタジーをうまく融合させて、鮮やかな映像で描き出したザイトリ
ン監督の豊かな才能を感じるとともに、主演のクヮヴェンジャネ・ウォレスの
存在感に舌を巻きます。ストレートに感情を出すだけでなく、それを抑制する
演技が素晴らしい!

少女のたくましい成長ぶりを見て、最後は前向きな気持ちにさせられました。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(90点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                             (田中ひろあき)

〔鑑賞データ〕
2013年5月15日(水)ヒューマントラスト・シネマ有楽町にて。午後12時50分の回


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