|
奪命金（LIFE WITHOUT PRINCIPLE）
（2011年 中国・香港）（上映時間1時間46分）
監督：ジョニー・トー
出演：ラウ・チンワン、リッチー・レン、デニス・ホー
＊新宿シネマカリテにて公開。全国順次公開
ホームページ http://datsumeikin.net/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
妻から新しいマンションの購入について相談されている香港警察のチョン警部
補（リッチー・レン）は、仕事を口実にいつも話をそらしていた。銀行の金融
商品営業担当のテレサ（デニス・ホー）は、ノルマ達成に苦しみ、中年女性の
チェンに躊躇しながらもリスクの高い投資信託商品を売り付ける。気がよくて
人望の厚いヤクザのパンサー（ラウ・チンワン）は、逮捕された兄貴分の保釈
金を工面するため、同郷の投資会社社長に相談する。そんな中、ギリシャ債務
危機で金融資産が下落。３人の運命も大きく変わっていく……。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ジョニー・トーが金融を描く。おカネはやっぱりコワイ……
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
『冷たい雨に撃て、約束の銃弾を』『エクザイル／絆』などで知られる香港ノ
ワールの名手ジョニー・トー監督が、世界的な金融危機をネタにして描いた映
画。犯罪も登場しますが、中心となるのは金融危機に翻弄される３人の男女の
悲喜こもごものドラマです。
その３人とは、香港警察のチョン警部補、銀行の営業担当のテレサ、そしてヤ
クザのパンサー。当初はそれぞれのエピソードが、バラバラに描かれていきま
す。
チョンは妻から新たなマンション購入を持ちかけられています。テレサは成績
不振でノルマに苦しみ、本来は勧めるべきではない中年女性に、ハイリスクの
金融商品を売り付けます。一方、パンサーは兄貴分が逮捕されたため、その保
釈金を工面するために、同郷の投資会社社長に相談します。
この３人をつなぐのは金融です。彼らの運命は、ギリシャ危機に端を発する世
界的な金融危機に翻弄されて、大きく変わっていきます。チョンの妻は夫の承
諾を得ないままに、マンションの仮契約をしたもののアララララ。
テレサは顧客の高利貸しが、引き出した500万HKドルを残して帰ってしまったこ
とからアララララ。
パンサーは、友達の社長の損金穴埋めのために高利貸しを襲って金を奪うこと
を手伝う羽目になってアララララ。
というわけで、３人ともとんでもないことになってしまいます。そのようすを、
スピーディーかつスリリングに描き出すトー監督。ダレるところはまったくな
し。唐突な展開もあったりしますがほとんど気にならず。ノワール映画顔負け
のサスペンスフルな展開で、目が離せませんでした。
投資などに無縁な私にとっては、金融をめぐるあれこれ（投資信託の販売の方
法とか）も興味深く鑑賞。
香港といえば長い歴史を持つ金融都市。この映画にも登場するように、庶民か
らヤクザまでいろんな人たちが、金融に群がり一喜一憂します。この映画が、
こんなに面白くなったのも、そういう背景が影響しているんでしょうね。
やがて点だった３人が1本の線につながってエンディング。何とも皮肉な結末が、
金融のコワサをあらためて思い知らせてくれます。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（89点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年1月8日（火）マスコミ試写（シネマート六本木）にて
[「た」のページ] |