樹海のふたり

(2013年 日本)(上映時間2時間4分)
監督・脚本:山口秀矢
出演:板倉俊之、堤下敦、きたろう、遠藤久美子、烏丸せつこ、関口知宏、長
谷川初範、新井康弘、藤田弓子、中村敦夫
*ユーロスペースほかにて公開
ホームページ http://www.jukai-futari.com/
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<ストーリー>
フリーのテレビディレクターの竹内(板倉俊之)と阿部(堤下敦)は、視聴率
の取れる番組を作ろうと、富士山麓の樹海に出かけ自殺しようとする人々の姿
を追う。しかし、彼らの人生に触れるうちに、自分たちの行動に疑問を抱くよ
うになる。そして、自分たちが抱える問題に向き合っていくのだが……。

<レビュー>
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富士の樹海を舞台にした作り手の思いが伝わるドラマ
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自殺の名所として知られる富士の樹海を舞台にしたドラマ。実話がベースだそ
うです。主演はお笑いコンビ「インパルス」の板倉俊之と堤下敦。

彼らが演じるのはフリーのテレビディレクター。高視聴率番組を作るために、
富士の樹海に出かけて、自殺者たちの姿を追います。

まず目を引くのがドキュメンタリータッチのリアルな映像。それもそのはず山
口秀矢監督は、ドキュメンタリー番組をたくさん作ってきた監督。特に前半、
富士の樹海を2人のディレクターが取材するシーンは圧倒的な迫力です。白骨化
した遺体、謎のお地蔵さんなど、ホラー映画かと思うほどの怖さです。

そんなふうに、樹海で様々な自殺志願者と会い番組を製作。見事に高視聴率を
取る2人。しかし、彼らの人生に触れるうちに、「自殺者を商売にしていいの
か?」と良心の呵責を感じ始めます。そして、自分たちの人生にも向き合うよ
うになります。

視聴率万能主義、身分の不安定な外部スタッフの存在など、現在のテレビ界が
抱える問題も背景として描きながら、2人のディレクターの私生活が描かれる後
半。1人は自閉症の子供を抱え、もう1人は認知症の父親を抱え……といった
深刻な問題が、前面に出てきます。

そして、それらを通して最後には、「とにかく生きているだけでいいじゃない
か」「自殺なんかしちゃダメだよ」というポジティブなメッセージを送ります。
途中で登場する地元のおばあさんや、自閉症の子供の絵などを使い、自殺の名
所として知られた樹海を生命の大地へと転化させるエンディング。作り手の思
い入れが感じられる映画です。

ただ残念なのは、詰め込み過ぎで消化不良の部分があること。何しろ樹海の自
殺志願者に加え、2人のディレクターの身に起こることも描いているわけです
から。それぞれが独立したドラマになりそうです。そのあたり、もうちょっと
整理した方がよかったのでは?登場人物を少なくしたりして。

全体に1人のディレクターのモノローグでドラマを進行させる手法も、ちょっ
と違和感がありました。あれだけ映像に力があるのだから、説明はなるべく少
なくした方がよかったと思います。作り手の思いが伝わる良い映画なだけに、
そのへんがもったいないなぁ。

ところで、宿泊所の謎の女で登場する烏丸せつこが異様に色っぽいんですが、
プロフィールを見たら1955年生まれ!マジですか?あれじゃ、堤下もダマされ
ます。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(86点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆
                           (田中ひろあき(ぽち))

2013年6月5日(水)マスコミ試写(シネマート六本木にて)


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