|
汚れなき祈り（DUPA DEALURI）
（2012年 ルーマニア・フランス・ベルギー）（上映時間2時間32分）
監督・製作・脚本：クリスティアン・ムンジウ
出演：コスミナ・ストラタン、クリスティナ・フルトゥル、ヴァレリウ・アン
ドリウツァ、 ダナ・タパラガ
＊ヒューマントラストシネマ有楽町ほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://www.kegarenaki.com/
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
＜ストーリー＞
ルーマニアの丘の上の修道院に暮らすヴォイキツァ（コスミナ・ストラタン）。
彼女のもとを孤児院で一緒に育った親友のアリーナ（クリスティナ・フルトゥ
ル）が訪ねてくる。アリーナはドイツで暮らしていたが、ヴォイキツァに会う
ためルーマニアへと戻ったのだ。アリーナはヴォイキツァと一緒にドイツで暮
らすことを願っていたが、信仰に目覚めたヴォイキツァは修道院を離れようと
はしなかった。そんな中、アリーナは少しずつ精神のバランスを失っていき…
…。
＜レビュー＞
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
悪魔祓いの悲劇を通じて現代に様々な問いを投げかける
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
重たい映画です。2005年にルーマニアの修道院で起きた悲劇を、『４ヶ月、３
週と２日』のクリスティアン・ムンジウ監督が映画化しました。
舞台になるのはルーマニアの丘の上の修道院。１人の神父を中心に、厳しい戒
律を守りながら修道女たちが暮らしています。
その中の1人がヴォイキツァ。彼女には孤児院で一緒に育ったアリーナという親
友がいます。ドイツに行っていた彼女が戻って、修道院に一時的に身を寄せる
ところがドラマのスタート。
アリーナはヴォイキツァに、修道院を出てドイツで一緒に暮らすように頼みま
す。しかし、信仰に目覚めたヴォイキツァは応じようとしません。そんな中、
アリーナは精神のバランスを崩し、病院に運ばれます。
それでも行く当てのないアリーナは再び修道院に戻り、やがてそこで悲劇が起
きます。
映画『エクソシスト』でもおなじみの「悪魔祓い」をめぐる悲劇を、ムンジウ
監督がありのままに描写しています。被写体から少し距離を置きつつ、何が起
きたのかをていねいに描きます。それを通して様々な問いを観客に投げかけて
います。
最大のテーマは、何と言っても閉鎖された組織の恐ろしさでしょう。神父をは
じめ修道院の人々は、けっして悪意を持ってアリーナに接しているわけではあ
りません。しかし、硬直した考えと閉ざされた空間が、彼らを狂気へと走らせ
ます。
そして、彼らとは対照的に丘のふもとに広がるのは、金がものを言い、悪意や
無関心が支配する世界。アリーナを追い詰めるのが彼らの悪意や無関心ではな
く、修道院の人々の善意だというのが何とも皮肉で、問題の根深さを見せつけ
ます。
神父が金の工面に追われたり、部屋が足りないゆえに新規の修道女を拒否せざ
るを得ないといった設定も、現代社会における宗教の問題点を浮き立たせてい
るように思えました。
いずれにしても、行き場のないアリーナは、社会によっても宗教によっても救
われませんでした。はたして本当の悪人は誰なのか。観終って心にズシーンと
くる問題作です。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき（ぽち））
〔鑑賞データ〕
2013年4月1日（月）ヒューマントラストシネマ有楽町。午後3時15分の回
[「け」のページ] |
|