君と歩く世界(DE ROUILLE ET D'OS)


(2012年 フランス・ベルギー)(上映時間2時間2分)
監督:ジャック・オーディアール
出演:マリオン・コティヤール、マティアス・スーナールツ、アルマン・ヴェ
ルデュール、セリーヌ・サレット、コリンヌ・マシエロ、ブーリ・ランネール、
ジャン=ミシェル・コレイア
*新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ http://www.kimito-aruku-sekai.com/
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<ストーリー>
ナイトクラブの用心棒のアリ(マティアス・スーナールツ)は、他の客とトラ
ブルになっていた女性ステファニー(マリオン・コティヤール)を助けて自宅
に送り届ける。ステファニーは、観光名所マリンランドでシャチの調教師をし
ていたが、事故で両足を失う。失意の中、アリと再会するステファニー。一方、
アリは格闘技の試合で金を稼ぐようになるのだが……。

<レビュー>
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両足をなくした女と粗暴な男。力強い再生物語
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事故で両足を失ったシャチの調教師と、粗暴なシングルファーザーとのふれあ
いの物語。といっても、お涙ちょうだいのラブロマンスではありません。邦題
はいかにもそれっぽいですが。

描かれるのは2人の男女の再生。ロマンスは、そのきっかけでしかありません。
何しろ出会いからして風変わり。粗暴で貧乏な男アリが用心棒をしているナイ
トクラブで、トラブった女性ステファニーと出会います。ステファニーは、シ
ャチの超教師ですが、私生活はかなり不安定なようです。

その後、ステファニーは事故で両足を失います。失意で引きこもる彼女ですが、
アリと再会します。アリは、脚のないステファニーに対してごく普通に接しま
す。それに気楽さを感じるステファニー。アリに誘われるままに、足のない体
で泳ぎます。

ジャック・オーディアール監督は、アリとふれあううちに少しずつ生きる喜び
を見出していくステファニーの姿を、セリフだけに頼らず美しい映像とともに
描いていきます。特にステファニーの「生」を象徴するような太陽の光が印象
的です。

その後、闇の格闘技の試合に出るようになったアリを間近で見て、ステファ
ニーはますます「生」へのベクトルを強めていきます。そこには当然ながら
「性」という要素もあります。

では、アリはどう変わるのか。行きずりの女と関係し、怒りに任せて自分の息
子にも手を挙げるアリ(といっても、根っからのワルではありません)。しか
し、ステファニーの様々な表情にふれるうちに、次第に人間らしい感情を取り
戻していきます。

それがクッキリと見えるのがラストに起きる衝撃的な事件。そこでのアリの行
動は、人間らしさにあふれています。その後の彼らの未来を照らすような、余
韻の残るラストも心に残ります。

ありきたりのロマンスではなく、肉体と肉体、本能と本能のぶつかり合いのよ
うな男女の関係を通して、生きることの根源に迫ったユニークな再生物語。何
とも力強い映画です。邦題を見て「泣きに行こう!」なんて思うと裏切られま
すが、先入観なしに観ればかなりの見応えがあります。

『エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜』のマリオン・コティヤールのたくましさ
に加え、相手役のマティアス・スーナールツの無骨さも魅力。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
(93点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)

                             (田中ひろあき(ぽち))

〔鑑賞データ〕
2013年4月10日(水)シネ・リーブル池袋にて。午後1時35分の回



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