凶悪

（2013年　日本）（上映時間2時間8分）
監督：白石和彌
出演：山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、池脇千鶴、白川和子、吉
村実子、小林且弥、斉藤悠、米村亮太朗、松岡依都美、ジジ・ぶぅ、村岡希美、
外波山文明、廣末哲万、九十九一、原扶貴子
＊新宿ピカデリーほかにて全国公開
ホームページ　http://www.kyouaku.com/
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＜ストーリー＞
雑誌記者の藤井（山田孝之）は、収監中の死刑囚須藤（ピエール瀧）から届い
た手紙を上司から渡され、面会に行くように命じられる。須藤は誰にも話して
いない3つの殺人に関与しており、そのすべての首謀者は「先生」と呼ばれる不
動産ブローカー木村（リリー・フランキー）だという。「先生」がのうのうと
生きていることが許せず、記事にしてほしいと藤井に依頼する須藤。藤井は調
査を進めていくのだが……。

＜レビュー＞
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色々な意味で怖すぎる骨太の犯罪映画
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死刑囚の告発をもとに、未解決の殺人事件を追った新潮45編集部によるベスト
セラー・ノンフィクション『凶悪　ある死刑囚の告発』をベースにした犯罪映
画です。事件の概要は新聞などで知っていましたが、こうやって映画になると
やっぱり怖いですねぇ～。

死刑囚がまだ誰も知らない殺人事件を告白。そのすべてにある人物が関わって
いると語る。その死刑囚と面会した雑誌記者が事件を追う……というお話。

タイトルの「凶悪」が示すように、この映画には2人の凶悪な人間が登場します。
そのうちの１人、死刑囚の須藤の極悪非道ぶりが冒頭から容赦なく描かれます。
いくらヤクザでも、こんなに残虐なヤツは他にいないだろう、というぐらいヒ
ドイです。

しかし、その後に登場する拘置所の須藤は、まったく別人のような表情（とは
いえ、時々本性を現すのですが）。彼の告白に最初は半信半疑だった雑誌記者
の藤井が、事件の真相を追ううちにどんどんその闇にはまっていくというのが
前半の展開。ある種のミステリー・サスペンス的な面白さがあります。

後半は、もう１人の「凶悪」が登場。人の弱みにつけ込んで平気で人殺しを指
揮する木村と須藤による恐ろしい犯行の様子が再現されます。

いやぁ～、ホントにこいつらヒドイですよ。直視できないようなエグい場面も
たくさんあります。人間の奥底にある、深い深い闇の存在について考えさせら
れてしまいました。

そんな中で、印象に残るのが借金苦の家族の話。彼らは木村の誘いに乗って、
父親を殺害して保険金をもらうことを受け入れてしまいます。一見、ごく普通
の家族が、ああいう恐ろしい行動に走るところに、善悪の判断の境目の曖昧さ
が浮かび上がってきます。

実は、この映画では雑誌記者の藤井と家族とのドラマも大きな柱になっていま
す。ラスト近くで、藤井の妻（やっぱり池脇千鶴は良い！）が、認知症の義母
に暴力を振るい、「死んでしまえばいい」と願ったことを告白します。人間に
完全な善人も悪人もなく、その濃淡の違いがあるだけだと強く認識させられた
瞬間。

その他にも、須藤の復讐心や藤井の正義感など、様々なことを考えさせられる
骨太な映画。観終わって、重たいものが胸に残りました。

これが長編２作目の白石和彌監督の師匠は故若松孝二監督だとか。なるほどね
ぇ～。何となく若松作品と似た匂いがしますね。

まあ、それよりも何よりも、この映画の最大の見所はピエール瀧とリリー・フ
ランキーの怪演ですよ。その怖さは日本映画史上に残るほど。夢に出てきそう
なのでご注意を。

≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（93点）

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（田中ひろあき）

〔鑑賞データ〕
2013年4月10日（水）シネ・リーブル池袋にて。午後1時35分の回

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