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今日子と修一の場合
（2013年 日本）（上映時間2時間14分）
監督・脚本：奥田瑛二
出演：安藤サクラ、柄本佑、和田聰宏、小篠恵奈、和音匠、田部周、カンニン
グ竹山、柴田理恵、諏訪太朗、高橋源一郎、高橋長英、宮崎美子、平田満
＊新宿ピカデリーほかにて公開
ホームページ http://kyokoandshuichi.ayapro.ne.jp/
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＜ストーリー＞
岩手県南三陸町出身の修一（柄本佑）と今日子（安藤サクラ）。浪人生の修一
（柄本佑）は、父の暴力から母を守るために父を殺害。少年刑務所を出所後に
東京の小さな町工場で住み込みで働く。一方、今日子は夫が病気になり生命保
険の外交員になるが、営業成績の不振から顧客に体を許し、それが家族に知ら
れて家を追い出されてしまう。東京である男と同居を始め、体を売る仕事を始
める今日子。そんなある日、東日本大震災が発生し、修一と今日子の故郷も被
害を受ける……。
＜レビュー＞
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震災をテーマに２人の男女の人生を繊細に描く
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『長い散歩』『風の外側』などの作品で監督としても評価が高い俳優の奥田瑛
二が、東日本大震災をテーマに描いたドラマ。主演は娘の安藤サクラとその夫
の柄本佑。て、家族映画かいっ！（ちなみにスーパーバイザーとして奥さんの
安藤和津の名も……）
ただし、さすがに劇中では夫婦役ではありません。出身地がどちらも岩手県南
三陸町というだけで、まったくの赤の他人という設定です。
冒頭は、安藤サクラ演じる今日子が朝帰りするシーン。やがて、同居する悪そ
うな男も帰ってきます。一方、柄本佑演じる修一は刑務所から出所して、勤務
予定の工場の社長と一緒にラーメンを食べます。その時発生する東日本大震災。
その後は、同時進行のドラマと同時に２人の過去が描かれます。リストラされ
てヤケになって母親に暴力をふるう父を殺害した修一。生活のために保険外交
員となり、営業不振から顧客に体を許したことがバレて家を追い出されてしま
った今日子。彼女はある男と出会い、売春をするようになります。
ふとしたことから人生の歯車が狂った２人。ですが、その軌跡は震災をきっか
けに大きく分かれます。今日子は震災によって、大きな罪を背負いこんでしま
います。それに対して修一は母を失うものの、同じく前科のある同僚や、修一
に好意を持つ女性らによって、少しずつ心を開き前向きになっていきます。
そんな２人の姿を、淡々と繊細に描き出す奥田監督。ほんのわずかな表情の変
化で、心の揺れ動きを写し取る演出が魅力的。
後半、２人は故郷へと向かいます。明るい灯を抱いた修一と絶望の今日子。被
災地の圧倒的な光景が、２人はもちろん観客の心も締め付けます。
避難所で我が子を見ても、声をかけられない今日子の切なさ。そして、坂を上
る修一と下る今日子がすれ違うラストシーン。２人の今後をあれこれと想像さ
せる余韻の残るエンディングです。
明確なメッセージを発しているわけではありませんが、震災という出来事を通
して、人間のもろさとたくましさを描き出した秀作。震災から２年以上過ぎた
のに、フィクションとして震災を取り上げた映画がいまだに少ない中、よくこ
れだけの映画を撮ったと思います。
ネタがネタなので、多少エグい場面もありますが、ギリギリで寸止めしている
ので嫌悪感を持つ人はいないはず。今日子の売春相手を作家の高橋源一郎が演
じるなど、ユーモラスなところもあったりして。
俳優陣では、安藤サクラ、柄本佑に加え、脇役も存在感のある演技を見せてい
ます。特に、修一を好意を持つ女性を演じた小篠恵奈が印象的でした。
≪ぽちの満足度≫
★★★★☆
（92点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年10月10日（木）新宿ピカデリ―にて。午後12時45分の回
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