ももいろそらを


(2012年 日本)(上映時間1時間53分)
監督・脚本:小林啓一
出演:池田愛、小篠恵奈、藤原令子、高山翼、桃月庵白酒
*新宿シネマカリテほかにて公開。全国順次公開
ホームページ http://momoirosora.jp/
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<ストーリー>
新聞記事の採点を日課にしている高校生の川島いづみ(池田愛)は、ある日財
布を拾う。持ち主は天下り官僚の息子。親友2人と一緒に届けに行ったいづみ
は、持ち主から奇妙な依頼をされる……。

<レビュー>
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女子高生たちの日常と非日常をモノクロ映像でみずみずしく描く
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全編手持ちカメラのモノクロ映像で撮影した青春映画。音楽ビデオやCMの演
出を手がけてきた小林啓一監督のデビュー作。2011年の第24回東京国際映画祭
「日本映画・ある視点」部門で作品賞を受賞しました。

冒頭は、サイフを見つけて、どうしようか迷っている主人公の女子高生いづみ
の表情。何やらアート系の映画のような出だしですが、中身はけっこう娯楽性
の高い映画です。

財布を拾ったいづみは、それが天下り官僚の息子のものだと知って、中のお金
を知り合いの印刷屋に貸してしまいます。しかし、その息子がイケメンだと知
った親友が返却しに行くことを主張。もう1人の親友と3人で彼の家に行きま
す。ところが、その息子は街の明るい話題を集めた新聞を作るように、3人の
女の子たちに命じます……。

正直なところ物語の展開はイマイチ物足りません。実は財布の持ち主の奇妙な
依頼の背景には、意外な事実があり、それが物語の大きなキモになります。し
かし、全体の構成が平板で盛り上げ方が足りないため、ドラマとしての魅力に
欠けます。

もっともそれは監督の意図するところなのかもしれません。小林監督が中心的
に描いているのは、女子高生たちの感情の揺れ動き。日常と非日常の間で、ク
ルクルと変わっていく彼女たちの心が繊細に描かれています。

特に面白いのが会話です。ほとんどしゃべりっ放しのいづみを中心に、ため口
だったり、けんか腰だったり、弱気だったり、後悔したり、ユニークな言葉が
ポンポンと飛び出します。いづみと知り合いの印刷屋のおやじとの釣堀での会
話など、笑いどころもたくさんあります。いまどきのリアルな女子高生の会話
をベースにしつつも、現実にはありそうもない言葉なども組み込んだ、バツグ
ンに魅力的な会話です。

光を効果的に取り込んだモノクロ映像も印象的。ラストシーンでは、タイトル
にもある「ももいろ」がモノクロ映像によって生きてきます。そこでのいづみ
の「バカ」というセリフも心に残ります。

女子高生のみずみずしい心情を独特のスタイルで描いた映画。青春の迷いや悩
みがリアルに伝わってきます。ユニークで他にはない魅力を持った青春映画な
ので、一見の価値はありますね。

≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆(+1/2★)
(90点)

≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆(+1/2★)
                         (田中ひろあき)

2013年1月13日(日)新宿シネマカリテにて。午後1時45分の回


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