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日本の悲劇
（2012年 日本）（上映時間1時間41分）
監督・脚本：小林政広
出演：仲代達矢、北村一輝、寺島しのぶ、大森暁美
＊ユーロスペース、新宿武蔵野館ほかにて公開
ホームページ http://u-picc.com/nippon-no-higeki/
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＜ストーリー＞
がんに侵された父の不二男（仲代達矢）と暮らす義男（北村一輝）。義男は妻
子と別れて仕事がなく不二男の年金で暮らしていた。そんなある日、自分の余
命を自覚した不二男は、部屋に閉じこもり、「このまま死ぬから、死んでも届
けずに年金をもらえ」と宣言する。必死で部屋から出るように説得する義男だ
ったが……。
＜レビュー＞
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ある家族に起きた悲劇をシンプルかつ濃密に描く
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『バッシング』『春との旅』など、日本の社会問題をリアルな視点から描いて
きた小林政広監督。この映画も小林監督らしい映画です。
主要な登場人物は、不二男と義男の父子。義男はリストラされて精神を病み、
妻子とも別れて、父の年金で暮らしています。一方、不二男は肺がんで余命わ
ずか。ある日、彼は部屋に閉じこもり、「このまま何も口にしないでミイラに
なる」と宣言します。
リアルタイムで起きるドラマはそれだけです。中盤以降は、不二男がかつての
日々を回想するシーンが中心になります。亡き妻との生活と彼女の死、義男の
リストラと離婚、東日本大震災……。平凡な家族の身に起こった様々な出来事
が描かれます。
特徴的なのは全編ほぼモノクロ映像である点。しかも、カメラは家の中の数か
所に固定されています。そのため、登場人物の半分はカメラに背を向けたまま
（話し手が変わってもカメラは切り替わりません）。
そこで演じられるのは仲代達矢と北村一輝による濃密な芝居。長回しのシーン
が続き、2人の迫真の演技が息詰まるような緊張感を生み出しています。
こんなに地味で、観客に媚を売らない映画も珍しいでしょう。その代わり、観
客の想像力を大いに刺激します。いったい登場人物は、どんな心理でいるのか。
なぜ彼らは、今の状態に至ったのか……。
唯一、この映画でカラー映像が使われるのが、幸せだった頃の義男夫婦が初孫
の顔を両親に見せに来るシーン。穏やかで幸福なそのシーンが、現在進行形の
モノクロシーンと鮮やかな対比を見せ、彼らの身に起こった悲劇について観客
に多くのことを考えさせます。
その根底にあるのは、弱者に冷たい日本の社会に対する小林監督の怒りでしょ
う。あからさまに何かを告発しているわけではありませんが、スクリーンのそ
こかしこから、小林監督の思いが伝わってきます。
単調なシーンが続くので、正直やや飽きてしまうところもありましたが、それ
でも観終わって重たいものが心に残りました。そういう意味で、見応えのある
映画なのは間違いありません。
≪ぽちの満足度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（90点）
≪ぽちのオススメ度≫
★★★☆☆（＋1／2★）
（田中ひろあき）
〔鑑賞データ〕
2013年9月8日（日）ユーロスペースにて。午後3時20分の回
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